パリ13区

劇場公開日:

パリ13区

解説

「ディーパンの闘い」「預言者」などで知られるフランスの名監督ジャック・オーディアールが、「燃ゆる女の肖像」で一躍世界から注目される監督となったセリーヌ・シアマと、新進の監督・脚本家レア・ミシウスとともに脚本を手がけ、デジタル化された現代社会を生きるミレニアル世代の男女の孤独や不安、セックス、愛について描いたドラマ。再開発による高層マンションやビルが並び、アジア系移民も多く暮らすなど、パリの中でも現代を象徴する13区を舞台に、都市に生きる者たちの人間関係を、洗練されたモノクロームの映像と大胆なセックスシーンとともに描き出していく。コールセンターでオペレーターとして働く台湾系フランス人のエミリーのもとに、ルームシェアを希望するアフリカ系フランス人の高校教師カミーユが訪れる。2人はすぐにセックスする仲になるが、ルームメイト以上の関係になることはない。同じ頃、法律を学ぶためソルボンヌ大学に復学したノラは、年下のクラスメイトたちに溶け込めずにいた。金髪ウィッグをかぶり、学生の企画するパーティに参加したことをきっかけに、元ポルノスターのカムガール(ウェブカメラを使ったセックスワーカー)だと勘違いされてしまったノラは、学内の冷やかしの対象となってしまう。大学を追われたノラは、教師を辞めて不動産会社に勤めていたカミーユの同僚となるが……。グラフィックノベル作家エイドリアン・トミネの短編集「キリング・アンド・ダイング」「サマーブロンド」に収録されている3編からストーリーの着想を得た。2021年・第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。

2021年製作/105分/R18+/フランス
原題または英題:Les Olympiades
配給:ロングライド
劇場公開日:2022年4月22日

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(C)ShannaBesson (C)PAGE 114 - France 2 Cinema

映画レビュー

4.0モノクローム映像が鮮烈に感情を伝える

2022年4月26日
PCから投稿

過去を見つめる手法としてモノクロを選び取る作品はいくつもあるが、ジャック・オーディアール監督の映像力はそういった時代性を超越し、色を削ぎ落とすことによって逆に鮮烈化した芸術性や感情の塊が、観客の胸にダイナミックに飛び込んでくる。若者たちの艶かしいセックス描写。エクスタシーと共に高揚していくエレクトロな音楽。絶頂を迎えつつもどこか満たされない心の中の空洞ーーー。トンネルの暗闇のような毎日の中で、彼らが切実に求めているものは明快で単純だ。しかし答えがあまりに身近にあるがゆえに、本人たちにとっては気づきにくく、なおかつ素直になることができない。そのいじらしさや頑なさも登場人物の魅力を高める一因となっていて、映画が終わる頃には長所も欠点も全て理解した上で、彼らのことが好きになっているから不思議なものだ。丁寧な物語運びの中に破天荒な要素を併せ持ち、まるで現代の神話のような特殊な輝きを放つ作品である。

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牛津厚信

4.0Artsy Film on the New Europe

2022年3月29日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

単純

A black and white episode film on Parisian young adults in the new normal of alternative lifestyles. It's erotic enough to make you want to stay young forever, but thorough in revealing the low points of the the urban 20's. More so the visuals drive the film in an updated stylish Transatlantic pairing to Francis Ha that looks directed by Gaspar Noe on a good day. The soundtrack by Rone is great.

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Dan Knighton

4.5オーディアールの味変

2024年11月17日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

近年の映画でよく扱われるテーマの一つに希薄な人間関係がある。インターネットの普及による現象だと推測できる。
親密になれない関係性、ある時ふと気付く孤独、刹那的に生きていることへの絶望と気付き、ズレ、そんなものを扱った作品で、洋邦問わずよく見るようになった。
この作品もそんな新たなカテゴリの一作だ。

ジャック・オーディアール監督が好きで彼の作品は多く観ている。本作もまたオーディアール監督だから観たわけだが、過去の作品群と比べて少々内容に違いを感じた。演出面においてはオーディアール監督らしさは存在していて満足のいくものだったが。

着想を得た原作があるとはいえ「燃ゆる女の肖像」のセリーヌ・シアマが脚本に名を連ねている影響が大きかったのかなと思う。
オーディアール監督は割と普遍的な感情を扱うのに対して、セリーヌ・シアマは自身が女性の同性愛者であることもあってか、同性愛や女性の自立とか、虐げられている女性とか、フェミニズムよりの作風の人だ。

ある意味で、時代とオーディアールとシアマがうまく融合したのかもしれないし、オーディアール監督の味変としても良かったのかもしれない。
しかし、群像とまではいかなくとも、軸が多様で焦点がぼやけたように感じたのはマイナスか。
それでも、軸の多様さも含めて実に現代的で興味深い作品だったのも確かだ。

オーディアール監督が好きだからかもしれないが、面白かった。

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つとみ

3.5率直な内容でおしゃれ。作られ方のうえでご苦労さま感は残る。

2024年3月22日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

冒頭のエミリーに裸シーン…。赤裸々なセックスシーンが多い中身の予告と思えば意味がなくもないが…。でも必要かな。

メインキャラたちは、挫折をしつつも何とか踏ん張っている、出来すぎないタイプ。そこはとてもよかった。共感しやすい。セックスも含め本当のところどうなのかと関心が持てる。

観終わってみれば、この作品の最も重きを置かれた主人公はノラであり、映画のテーマは、主に同性愛へ移行するまでの自分探しへの旅、なのだろうと思えてくる。
最初の方の刺激的シーンで引き寄せられ、後半にノラに移行。いわば、おとり・カモフラージュ作戦? 最初から同性愛テーマで押したならば観る人は限られるから、これは仕方がないかな…。わたしはノラの部分も含め、最初から最後まで面白く観られたのだから、手口はなかなか上手いと言える。モノトーンのお洒落で意外に見やすい画面にも引き込まれた。
しかし、青春群像路線にしたいのなら、ノラ役はもう少し地味な女優のほうがよかったのでは?どうしても後の二人より、ノエミ・メルランがずば抜けて一番印象に残る。
それから、もうひとり、悩める男性キャラが欲しかった。チャラ男ひとりでは力不足。

白人、黄色人、黒人が一人ずつだったのは、バランスを意識したのか?

少々遠回りというか…何だかいろいろご苦労さまね〜と感じさせる映画ではあった。

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あま・おと