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作家性の強い過激な社会派映画がベルリン金熊賞「アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ」プロデューサーに聞く

2022年4月23日 21:00

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アダ・ソロモン
アダ・ソロモン
(C)Jens Koch for Berlinale 2021

ルーマニアの鬼才ラドゥ・ジューデ監督が、世界的パンデミックとその後の社会の閉塞感とともに、人間の「性」をアイロニーに満ちたまなざしで描き、2021年の第71回ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した「アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ 監督〈自己検閲〉版」が公開された。日本ではジューデ監督自ら追加編集を施した「監督〈自己検閲〉版」での公開となり、ぼかしやカットの追加のほか、ジューデ監督によるアイロニカルでユーモアあふれるメッセージが本編の所々に映し出される仕様だ。コロナ禍で製作された低予算の社会派映画がなぜ、ベルリンで最高賞に輝いたのか――本作プロデューサーのアダ・ソロモンが製作経緯を語った。

<作品あらすじ>
コロナ禍のブカレストの街をさまよい歩く女性エミ。名門校の教師である彼女は夫とのプライベートセックスビデオをネット上で拡散されてしまい、夜に開かれる緊急保護者会を前に、事情説明のため校長宅へ向かっていた。彼女の不安といらだちは街の人々が抱える怒りや絶望と重なりあい、猥雑で怒りをはらんだ空気が徐々に膨れ上がっていく。
――ラドゥ・ジューデ監督との出会い、タッグを組み制作することになったきっかけについて教えてください。

彼とはアメリカ映画の現地プロダクションのスタッフとして現場で出会いました。私はプロダクションマネージャー、ラドゥはADとして携わっていて仕事の合間で話すようになっていました。ある日、画家のパウル・クレーについて書かれた美術史兼エッセイをラドゥが手にしていて、じつはその本は私の義理の母の書いたものでした。当時彼はまだ25歳くらいで、若い人がこんな本を読むなんて! と驚いたのです。それから彼の世界観や文化的な背景をよく知るようになり2004年に自分のプロダクションを立ち上げた時に彼の1本目の短編を作ることになり、それ以来、一緒に仕事をしています。

――映画祭での上映形式とは異なる「監督自己検閲版」ですが、やはり監督として、製作者としても苦渋の決断だったのではないでしょうか。このような形での公開に至った経緯はどのようなものだったのでしょうか。

検閲バージョンを作るにあたってジレンマはありました。自分たちがこの作品に何を求めているのか、何をしたくないかを見極めることが必要でした。この作品をひとつのアートとして、検閲によって作品を傷つけることをしたくなかったが、同時に多くの観客へこの作品を届ける道筋を作れることも分かっていたので、私自身は妥協することにしました。当初、ラドゥは嫌がっており、赤信号状態でしたがラドゥ自身が編集する提案をしました。

ラドゥは、このバージョンをもちろん喜んでいるわけではないけど、他人の手によってではなく自身で編集ができたことは、時間が経ってから振り返れば、このバージョンもユニークな公開になっているのではないかと思います。

画像2(C)2021 MICROFILM (RO) | PTD (LU) | ENDORFILM (CZ) | K INORAMA (HR)
――第3部の集会シーンにはあなたもカメオ出演されていました。あのシーンのセリフはアドリブもありますか。演出について教えてください。

ほぼアドリブはありません。製作費が少なかったこともあり、オンラインでのリハーサルは大変でしたが書いた台詞やタイミングは入念に、監督はキャストたちとかなりの時間を費やして決め込んで現場に臨みました。セリフの即興ということはありませんでしたが、もともとはなかったパンデミックの要素を盛り込んでいるので、そういった意味ではラドゥはとてもフレキシブルな監督で起きていることに対して反応して(作品へ)落としていくことが出来るし、いろんな環境に適応していく能力を持っています。国からの援助や映画の完成保険システムもコロナ禍でなかった中での撮影では、皆の安全を第一に、自分たちでリスクを最小のものにしながらとても慎重に撮影に臨みました。

――彼らの終わりのない議論のエンディングの3つの提示について、あの形式にされたのはなぜでしょうか。

観客が楽しんでもらえるような仕掛けにしました。自分のエンディングを観客に選んでもらえるようにしています。いろんな風刺があるのは、(普段あまり自国の作品を観ない)ルーマニアの観客へ向けて、商業的な要素を含めてラドゥ作品のような毛色の違った作品を提案する映画づくりを目指しました。

――ベルリン金熊賞受賞という快挙を成し遂げられました。現地での受け止められ方、この結果についてどのように思われますか。

通常の映画祭上映だと、カフェなどにいて周りから感想がなんとなく伝わってきますが、この年はオンライン開催だったのでそういった生身の観客のリアクションは分かりませんでした。しかし、ネット上やSNSでのリアクションが上映後にこんなにも一気に流れてくることに対しては想定外でしたが、皆で読んでいました。伝え聞くのではなく、ダイレクトな感想に触れることが出来たのは良い体験でした。

金熊賞はとても驚きました。この受賞の理由のひとつは、2020年の審査員が通常の審査員の編成(プロデューサー、役者、撮影監督など)とは異なり、“映画監督だけ”であったことも影響があったのではと思います。監督ならではのビジョンを理解し、評価してくれたこと。この点は大きかったのではないかと思います。

画像3(C)2021 MICROFILM (RO) | PTD (LU) | ENDORFILM (CZ) | K INORAMA (HR)
――作家性の強い作品は、興行においての道のりが険しいと思います。どのように乗り越えているのでしょうか?

ルーマニア人はルーマニア映画を見ないのです(笑)。だからこそ、ルーマニアの映画に注目してもらうきっかけを作らねばならなくて、刺激的なタイトルであったり、内容、フックを考えます。

今は、映画評が大衆の見に行くかどうかを決める指標にはならないし、動員に繋がるものではないので、他の国もそうだと思いますが……文化的なプレスは死に絶えつつあります。普段の生活の中で見たり聞いたり触れるもの以外は、フックが非常に重要で、そういった意味ではこの作品が持つユーモア、刺激は助けになったと思います。

アートハウスな市場が限られている作品は、どうしたらよいか――私たちはキュレーション効果に頼ります。上映後のディベートの機会や他国の誰かを招いたオンラインディスカッションなどです。配給面でも世界的なワールドバザール(NetflixやAmazonなど)はタイトルが多すぎて誰にも見てもらえないと思うので、逆にMUBIなどのテーマを絞ったり普通の紹介以上のフックをアドオンしてくれるプラットフォームも大事だと思います。

映画にかかわる監督、役者のキャリアにきちんとフォーカスして取り扱ってくれるかどうか。大きなモールとブティックのような差みたいな感じかしら。私たちにとっては映画祭はとても重要だし、映画祭がなければこういった作品を世界に届けることができないと思います。

アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ 監督〈自己検閲〉版」は4月23日から、東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムほか全国で順次公開。

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