「もう、孤独じゃない」と泣いていた シアン・ヘダー監督が語る「コーダ あいのうた」オスカー受賞の裏側
2022年4月20日 11:00

仏映画「エール!」(2014)をリメイクしたヒューマンドラマ「コーダ あいのうた」(公開中)はサンダンス映画祭で上映されると、世界のバイヤーがその権利に殺到。史上最高額の26億円でアップル社が落札し、世界を驚かせた。そして、第94回アカデミー賞では、作品賞、助演男優賞、脚色賞の3部門で栄冠に輝いた。タイトルがあがるたび、声援とともにASL手話での拍手(手のひらをひらひらとさせる)が会場を包み込む――そんな光景が印象的だった。
このほど、アカデミー賞受賞&大ヒットに記念し、脚本・監督を手がけたシアン・へダーの特別インタビューが披露された。
「コーダ あいのうた」は、聴覚障がいを持つ家族のなかで、ひとりだけ耳の聞こえる少女が、歌うことを夢見て成長していくさまを描いた作品。主人公のルビー役は「ロックキー」のエミリア・ジョーンズ。トロイ・コッツァーがルビーの父フランクを演じ、ろう者の男性俳優として初のオスカーを獲得。妻・ジャッキーを「愛は静けさの中に」でオスカー主演女優賞を受賞しているマーリー・マトリン、兄レオをダニエル・デュラントが演じている。マトリンとデュラントは、コッツァーと同じく、実際に耳の聞こえない俳優だ。

第94回アカデミー賞では、一体どんなことがあったのだろうか。ヘダー監督は、バックステージの様子について「マーリー(・マトリン)は泣いていた」と明かす。
「マーリーが『35年前、自分は(ろう者の俳優として初めて)アカデミー賞を受賞した。けれどもこの長きに渡って私はこの業界で孤独だった。もう孤独じゃない』と、言っていたんですよね。それを彼女が言った時に、彼女の通訳さんの声が震えて、泣き出してしまった」
本作の受賞について「変化の表れになりうると、ムーブメントになりうると。宣言しているような、そんな瞬間だったと思います」「特にマーリーにとっては、非常に長い長い戦いで、ようやく勝ち得たものだったから」と話すヘダー監督。制作会社の反対を押し切り、耳が聞こえない役柄には“実際に耳が聞こえない俳優”をキャスティング。その結果として、コッツァーにろう者の男性俳優として史上初のアカデミー賞助演男優賞をもたらすことになった。

受賞後には、スティーブン・スピルバーグ監督から「ここ5年で見た映画の中で最も好きな一本」と祝福されたことを告白。さらに、社会派ドキュメンタリー作品で知られるマイケル・ムーア監督が「コーダ あいのうた」の話だけをしたポッドキャストの存在を知り「『マイケル・ムーア?!』って思いました(笑)」と嬉しい驚きがあったことも告白。名優ハビエル・バルデム、「DUNE デューン 砂の惑星」のドゥニ・ビルヌーブ監督といった映画人たちから“愛あるサポート”を受けていたことも明かし「私の映画作りのヒーローたちが、この映画をみてどういうふうに思ったのか、ということを言ってくれるわけですよね。本当に信じられない状況です」と興奮気味に語った。
日本の観客に対しては「本作は、家族についてのストーリーです。私たちはそれぞれ皆違うけれども、想像している以上に、私たちには共通するものがある、というメッセージが広がればと思います」とメッセージ。「日本の皆さんが本作を愛してくださっている事をとても嬉しく思いますし、日本で公開し、見て頂けることがとても嬉しいです」とコメントを寄せていた。
(C)2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS
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