「アバランチ」悪役で話題に プロボクサー、サラリーマンを経て海外で躍進する“逆輸入俳優”木幡竜
2022年4月13日 11:00
年齢と身体の限界を超えてもなお、闘い続けることでしか生きる価値を見出せない元ボクサーを描く映画「生きててよかった」が、5月13日から公開される。主演を務めるのは、2021年に放送された綾野剛主演のフジテレビ系ドラマ「アバランチ」で“最狂の敵”役を演じ、注目を集めた木幡竜。自身もプロボクサーとして活躍した経験があるなど、木幡の異色の経歴を紹介する。
「ただ強くなりたい!」という思いだけでボクシングを始めた木幡は、世界チャンピオンも輩出している名門・横浜高校ボクシング部を経て、井上尚弥や八重樫東など多くの名選手を育てる大橋ボクシングジムに所属し、プロボクサーとして活躍。将来を期待されるなか、「本当の強さとは、フィジカルの強さだけではない」と悟り、24歳で現役を引退する。
第2の人生を歩むため様々な職業に就き苦戦する本作の主人公・創太同様、アルバイトや広告代理店でのサラリーマン生活を経験し、2004年に俳優活動を始めるが、すぐに芽が出ることはなく不遇の時代を過ごす。
その後、オーディションで出演を勝ち取った中国映画「南京!南京!」(09)で日本人将校役を演じ高い評価を得ると、単身中国に渡り、翌年にはアンドリュー・ラウ監督作「レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳」で悪玉のトップに抜てきされ、ドニー・イェンと死闘を繰り広げた。
以降、中国を拠点に数々の映画やドラマに出演し、ゼロからの猛勉強で中国語をマスターした。「レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳」のプロデューサーを務めたゴードン・チャンは、自身が監督した「ドラゴン・フォー 秘密の特殊捜査官 隠密」(14)で木幡を初の中国人役に抜てき。その理由を「元ボクサーということでアクションの覚えもよく、どんな困難にも屈しない。中国で、日本人以外の役にも挑戦してほしいと思ったし、彼はそれを実現できると確信していたんだ」と語っている(2016年放送の『外国人在中国』より)。
日本でも、ドラマ「アバランチ」の“最狂の敵”役で注目を集めた木幡。対峙した綾野剛は、「元々ボクサーということでキレもすごいありますし、アクションも次の一手が全く読めないので、必死に避けるしかないですし、必死に打ち込むしかない」と賞賛している。
木幡の強みは、元プロボクサーとしての経験と、中国で大物俳優らと渡りあったキャリアが物語るアクション。本作の出演にあたり、ひたすら納豆と豆腐を食べ続ける食事制限とジムでの自重トレーニングを行い、約2カ月かけてマイナス10キロの減量、そして体脂肪率3パーセントという驚異の肉体を作り上げた。アクション監督・園村健介の指導のもと、カメラアングルもミリ単位で計算された“規格外”の本格アクションに挑んでいる。
長年の闘いが体を蝕みドクターストップによって強制的に引退を迫られたボクサー・楠木創太(木幡)は、闘いへの未練と執着を捨てきれぬなか、恋人との結婚を機にボクシングを諦めることに。新しい生活を築くために仕事に就くも、不器用で何をやってもうまくいかず、社会にも馴染めず苦しい日々を過ごす。そんなある日、創太のファンだと名乗る謎の男から大金を賭けて戦う欲望うずめく地下格闘技へのオファーを受ける。もう一度闘えることに、忘れかけた興奮が蘇り、沸き立つアドレナリン。その高揚感は何物にも代えがたいものだった。
「生きててよかった」は、5月13日から新宿武蔵野館ほか全国公開。
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