【ネタバレあり】田中圭&南沙良、禁断の欲望に取り憑かれた教師の“自分”殺害計画を読み解く
2022年4月9日 11:30
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「女子高生に殺されたい」――衝撃的であると同時に、心の奥底にあるほの暗い好奇心を刺激され、ついその欲望の中身をのぞきたくなるようなタイトル。映画「女子高生に殺されたい」(公開中)で描かれるのは、禁断の願望に取り憑かれた高校教師・東山春人の9年間に及ぶ、前代未聞の“自分”殺害計画だ。
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話題作への主演が途切れない田中圭は本作で、オートアサシノフィリア(自己暗殺性愛=自身が殺される状況に興奮を覚えるという性的嗜好)を抱え、“理想の殺され方”のために完全犯罪を遂行しようとする春人を体現。そして、映画初主演作「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」で新人賞を多数受賞し、快進撃を続ける若手実力派の南沙良が、優等生だが、ある秘密を抱える生徒・佐々木真帆を演じた。劇中では、緻密な心理描写と、先の読めないサスペンスが複雑に絡み合い、春人の常軌を逸した計画がノンストップで進んでいく。誰もがのぞき見たくなる、禍々しく妖しい魅力に満ちた物語に身を委ねた田中と南に、公開後のいまだから話せる本作の魅力について、語ってもらった。(取材・文/編集部、写真/高野広美)
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桜舞い散る新学期、34歳の日本史教師・東山春人は、進学校の二鷹高校に赴任する。端正なルックス、実直で気さくな人柄をあわせ持つ春人は、たちまち校内の人気者となり、恋を夢見る女子生徒たちの熱い眼差しを一心に浴びることに。しかし、春人にはある秘密があった。「殺されたい……僕は殺されるために、この学校に赴任してきた」。春人はやがて、完全犯罪のシナリオの“登場人物”となる、4人の女子生徒に近付いていく。
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原作は、「ライチ☆光クラブ」「帝一の國」などで知られる鬼才・古屋兎丸氏による、画業20周年記念作品。ともすれば物議を醸しそうな、挑戦的な題材の脚本に、田中と南は、どのような感想を抱いたのだろうか。
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ふたりの言葉通り、映画版は、原作の核となる部分を大切にしながらも、いくつか変更ポイントも存在する。まずは、原作にはいない映画オリジナルのキャラクター、演劇部の君島京子(莉子)と、柔道部の沢木愛佳(茅島みずき)が登場すること。この変更により、春人が狙う「自分を殺してくれる女子高生」とは誰なのか、という緊張感が生まれている。さらには、原作ではクライマックスで語られる春人の計画の全貌が、中盤で明かされること。映画版ではクライマックスの舞台として、文化祭でのクラス演劇が用意されている。
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田中は、表向きは好感度抜群の爽やかな人気教師でありながら、内に潜む衝動を抑えられない男という難役を、色気と狂気を織り交ぜ、不気味に演じ上げた。女子高生たちに近付き、自身への好意を利用することで、途方もない願望を叶えようとする。そうした点で、原作よりも色気や残酷さが数段増したキャラクターになっていると言えるだろう。共感できない「分からなさ」もあるなかで、この新境地ともいえる役と、どのように向き合ったのだろうか。
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劇中で春人は、9年間も思い焦がれた「自分を殺してくれる女子高生」として、真帆に迫っていく。春人の妄想やフラッシュバックやモノローグなど、多彩な語り口のなかで、春人の思惑と、真帆の知られざる過去が浮かび上がってくる。田中が「難しい役」だと語る通り、南扮する真帆は、解離性同一性障害を抱える役どころ。大人しく引っ込み思案な真帆のなかに、真帆が心のバランスを崩した際に現れる気の強いカオリ、凶暴なキャサリンという複数の人格が同居している。南は、声の出し方やふとした眼差しで、3つの人格を自在に演じてみせた。
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本作の大きな見どころのひとつは、春人と真帆の直接対決のシーン。ある事件をきっかけに、真帆のなかに眠るキャサリンという人格を知った春人は、罠とトリックを張りめぐらせ、真帆を逃げられない状況にまで徹底的に追いこんでいく。クライマックスのクラス演劇と重なるように、春人が操り、配置した生徒たちが、完全犯罪のシナリオのそれぞれのピースとなって、ひとつの大きな物語を形作る。「女子高生に殺されたいんだ!」と絶叫する春人、鬼気迫る表情でその狂気を見つめる真帆。ふたりの熱量の高い芝居合戦が繰り広げられる。
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最後に、映画版ならではの魅力を教えてもらった。
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