濱口竜介監督、西島秀俊ら「ドライブ・マイ・カー」チームがLAで会見 アカデミー賞授賞式に思い馳せる
2022年3月27日 14:00
「この10日間で色々ありすぎて、今は凪という感じですね」。
第94回アカデミー賞授賞式を明日に控えた気持ちを聞かれ、濱口竜介監督は、笑いながらそう答えた。
濱口監督は3月26日の午後(現地時間)、出演者の西島秀俊、霧島れいか、岡田将生とともに、米ロサンゼルスで行われた日本メディア向けの記者会見に出席。役者陣は「さっき到着したばかりで、まだ実感がない」というが、濱口監督は英国アカデミー賞が行われた翌日となる今月14日にロサンゼルス入りをしている。だからこそ、その間「色々あった」わけだが、その中にはスティーブン・スピルバーグとの初対面もあったそうだ。
「ノミネートされた人たちが集まるディナーがあり、そこにスピルバーグ監督もいらしたんです。みんながスピルバーグさんと話したがるので、なかなか順番が回ってこなかったんですけど、話をうかがえたら、ひとつひとつが映画の歴史そのものという感じでした。僕自身が尊敬するジョン・カサべテス監督のところでインターンをされていた話とか、『スター・ウォーズ』の最初のシーンで(テロップが)上がっていくのを提案したのはデ・パルマだったという話とか」(濱口監督)。
「ドライブ・マイ・カー」について、スピルバーグ監督は、「家族みんなで見た。素晴らしかった」と褒めてくれたとのこと。アメリカで今作が高く評価されたことについて改めて聞かれると、濱口監督はこう答えた。
「アメリカの観客はある種、厳しい。面白いか、面白くないか。この映画は人生にまつわるテーマをいくつも扱ってはいますが、観客にとって面白かったんだと思います。3時間の上映時間がまるで苦じゃなかったと、みなさん驚きとともに言ってくれますので。それは、役者さんがサスペンスを保ち続けてくれたおかげです。この人はこれからどうなるんだろう、この人はどう感じているんだろうというのを、役者さんたちは紋切り型ではない形で表現してくれました。ひとりひとりが、予想がつかない形で画面の中に現れてくる。だからみんな映画から目を離せないし、耳をすませてしまう。自分が現場で感じていた感覚が、アメリカの観客に届いたんだなと思っています」(濱口監督)。
一方で、役者陣は、濱口監督がやりやすい現場を作り上げてくれたことに感謝を示した。岡田は「リスペクトというものがいかに大切かをこの現場で初めて知った」と言い、西島も賛同する。
「濱口監督は、『ちょっとでも違和感があったら伝えてください』と、常に言ってくださるんです。キャラクター同士が近づいていく時に、俳優同士で無理に近づくと、どうしても何か歪みが出るんですが、濱口監督は映画の中だけでなく現場でも、僕たちが時間をかけて知り合い、近づいていくというプロセスを丁寧にやってくださったんですよ。ほかの現場でもそういうことが行われてほしいし、僕自身が今後かかわっていく映画でもプロセスを大切にするスタッフのひとりになりたいなと思います」(西島)。
映画でとても重要な、運転手のみさきを演じた三浦透子は今回、渡米していない。岡田は、「それがとても残念。三浦さんのためにも、式典にはしっかり立っていたい」と語った。本番が24時間以内に迫ったことについて、今、彼らはさまざまな思いを抱えている。
「ずっと夢心地で、今も信じられない気持ち。昔からスクリーンで見てきた人たちが同じ会場にいるのかと思うと、ここにまたスクリーンがあって、そういう映画を見ているような気持ちになるんじゃないかと思っています。でも、なかなかできない体験ですし、しっかり味わって、目に焼き付けて、ただ、ただ、楽しみたいと思います」(霧島)。
「映画を愛し、映画を製作する人たちの集まりなので、同じ仲間というつもりで参加したいと思います。なかなか行けない場所ですし、いろんなものを見て、感じて、それを持ち帰って、日本の若い俳優さん、女優さん、スタッフと共有し、若い世代がここにまた来られるように少しでも何かできたらいいかなと思っています」(西島)。
「世界中からすばらしい映画人が集まって来る場所なので、『あんなところにデンゼル・ワシントンがいる』『あんなところにペネロペ・クルスが』などと、ひとりの映画ファンとして楽しみたいと思います。そして、今年のアカデミー賞がどこに行くのかというのも、単純に楽しみたいですね」(濱口監督)。
明日の今頃、彼らは、さらに夢のような気分を体験することになるのだろうか。
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