「カモン カモン」ジャパンプレミア 音声ハプニングもマイク・ミルズ監督が粋な対応
2022年3月22日 17:00
「20センチュリー・ウーマン」などのマイク・ミルズが監督・脚本を務めたA24製作映画「カモン カモン」のジャパンプレミアが3月19日、都内で開催され、ミルズ監督がオンラインで出席。日本版ビジュアルを手がけたグラフィックデザイナーの大島依提亜氏が聞き手となり、本作についてトークを繰り広げた。
「ジョーカー」のホアキン・フェニックスが主演を務める本作は、ラジオジャーナリストのジョニーが、9歳の甥っ子ジェシーとの突然始まった共同生活を通して、初めての子育てに戸惑いながらも、絆を見出していく姿を描いた感動のヒューマンドラマ。
イベント冒頭では、スクリーンにミルズ監督の姿は映るが、音声が聞こえないというアクシデントが発生。そんな中、ミルズ監督は「来場してくれてありがとう」「みんな元気?」「この状況は笑えるね」といったメッセージを添えた手書きのイラストを披露し、粋な計らいに会場は拍手と笑いに包まれた。
その後、音声がつながり、本作をモノクロにした理由を問われたミルズ監督は「昔からモノクロ映画が好きだったんだ。日本だと小津安二郎監督の作品とかね。だから、いつかモノクロ映画を撮ってみたいと思っていた。本作が大人と子どもの物語なので、ある種の寓話性を持たせたかった。リアリティをそのまま描いているのではなく、我々のリアルについての寓話。そういった意図もあってモノクロにしたんだ」と説明。続けて、「実際に白黒で映画を撮ってみると、より色んなことがシンプルになっていった。フォーカスすべき人の顔や表情だったり、佇まいが優しくなっていく実感があって、我ながら気に入ってるんだ」と振り返った。
ジョニーがジェシーに読み聞かせるシーンで「オズの魔法使い」をセレクトした理由については「正直に言うと、製作上の都合。通常は著作権があるため使用料がかかってしまうが、『オズの魔法使い』はパブリックドメインで、無料で使えたんだ(笑)」と裏側を告白。「『オズの魔法使い』も本作も、主人公が旅路の中で自分を発見していくロードムービーの側面がある。その繋がりに気がついて、撮影の直前にこの本を使うことを決めたんだ。『オズの魔法使い』は、皆それぞれ欠点や不自由を抱えながらも、周りと力を合わせながら何とか前に進もうとする物語。まさにこの映画だと思った。撮る側が感性を磨きさえすれば、魔法のような機会を引き寄せることができると思っている。本当にたまたまだったんだけど、『オズの魔法使い』を選んだことも映画のマジックが効いたと思っている」と明かした。
映画のタイトルはもともと「The Magnetic Fields(磁場)」が候補だったという。ミルズ監督の好きなバンド名から来ているが、もうひとつの理由として「ロジックや言語でもなく、エネルギーをもって牽引する惑星のようなものを意味していて、これは人間も同じだと思う。人と人の間にエネルギーが交流している。私自身、一人の時間が多くて、働きすぎだと思う。一人で問題を解決しようとするが限界がある。友達や家族など、周囲と関わることで自分を見出していくんだ。この映画でもそういうことを描いている。お互いの関わり合いの中で傷を癒し合っているんだ」と力説。
最後に、ミルズ監督は「時間を割いて映画を見てくれる観客がいて、はじめて映画が完成されるんだ。皆さんがこの映画を完成させる存在だと思っていて、この映画の存在を可能にしてくれた皆さんに改めて感謝を伝えたい。バーチャルでだけど、皆さんに会えて本当にうれしい」と言葉を送り、温かい拍手の中でトークイベントは締めくくられた。
「カモン カモン」は4月22日から東京・TOHOシネマズ日比谷ほか全国で公開。
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