岩波ホールでの最後の上映作 ヘルツォーク新作「歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡」6月4日公開
2022年3月16日 10:00

ドイツの鬼才、ベルナー・ヘルツォーク監督の新作「歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡」が、6月4日から岩波ホールで公開することが決定。合わせて日本版のポスタービジュアルと予告編が披露された。本作は、7月29日に閉館予定の岩波ホールでの最後の上映作品となる。
美術品の蒐集家、考古学の研究生、ジャーナリストと、様々なフィールドで非凡な才能を発揮した、イギリス人作家ブルース・チャトウィン(1940―1989)の没後30年に、生前チャトウィンと親交を結んだヘルツォークが、パタゴニアや中央オーストラリアのアボリジニの地など、チャトウィンが歩いた道を自らも辿り、彼が魅了された「ノマディズム/放浪」という、人間の存在の根底にある大きな概念を探究する旅に出るドキュメント。ヘルツォーク監督のドキュメンタリーが劇場公開されるのは、2012年の「世界最古の洞窟壁画3D 忘れられた夢の記憶」以来10年ぶり。また、岩波ホールでヘルツォーク監督作を公開するのは、1983年の「アギーレ 神の怒り」以来、39年ぶりとなる。
旅人で作家のブルース・チャトウィンは、幼少の頃、祖母の家のガラス張りの飾り棚にあった“ブロントサウルス”の毛皮をきっかけに、先史時代や人類史に関心を抱いた。チャトウィンが最終的に選んだのは自らの足で旅をしながら小説を書く人生だった。南米を旅し、デビュー作「パタゴニア」を書き上げたチャトウィンは、その後、アボリジニの神話に魅せられ、中央オーストラリアを旅した。当時は不治の病だったHIVに感染し、自らに訪れる死を悟ったチャトウィンは、死に近づいたアボリジニが生を受けた地に帰還するように、自らの死に方を探りながら「ソングライン」を書きあげた映画は、一枚の毛皮から始まったチャトウィンの旅がユーカリの木陰の下で終わるまで、その過程で交差した人々のインタビューを交えながら、全8章、ヘルツォーク監督自身のナレーションで綴られていく。
動かずしてあらゆる情報を簡単に入手することができる今の時代に、未知との遭遇を求め旅の中に自らの生き方を探した作家チャトウィン。“自分の足で歩き、見て、感じる”ことの大切さを伝える本作品が、多くの人間にヒントと勇気を与えるだろう。
(C)SIDEWAYS FILM
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