【脱力トーク満開】「THE3名様」佐藤隆太×岡田義徳×塚本高史×森谷雄監督、それぞれの12年間
2022年2月23日 04:00
石原まこちん氏の人気漫画をオリジナルDVDとして実写シリーズ化して人気を博した「THE3名様」の復活が昨年12月に発表されると、大きな話題を呼んだ。「THE3名様 リモートだけじゃ無理じゃね?」のタイトルのもと、佐藤隆太、岡田義徳、塚本高史の3人が12年ぶりに再結集。映画.comでは、主演3人と監督・プロデューサーの森谷雄に取材を敢行した。(取材・文・写真/大塚史貴)
これといったストーリーのない脱力感満載の「THE3名様」は、フリーターの3人組がファミレスに集い、ダラダラと緩い会話を繰り広げる深夜の日常を描いたもの。2005年に実写化した際は、主人公の3人(ジャンボ、まっつん、ミッキー)を佐藤、岡田、塚本が演じ、福田雄一が監督・脚本を務めている。いまだにファンからの注目度は高く、昨年10月に森谷監督を含む4人で塚本の誕生日を祝う写真がSNSにアップされると、新シリーズへの期待が高まる声が多く寄せられていた。
森谷:4人で集まるという時点で、「これはやる事になるんだろうな」という空気になっていたような気がします。
佐藤:何も決まっていなかったけれど、「これは完全に、やるために集まってますよね!」みたいな(笑)。事あるごとに「やりたいよね」と話はしていたのですが、コロナ禍で自宅にいる時間がすごく多くなって、みんなの作品を見る環境が変わってきたというのもきっかけのひとつかもしれません。いま「THE3名様」の緩さみたいなものを気軽に家で見られたら、ホッコリできるかなと思って。こういう世の中になって、僕としては「好きなことをやれるときにやっておきたい!」という思いもありました。
塚本:12年前は、毎回2日で撮っていたんですよね。僕の中では大変だったなという思いはあったんですよ。ミッキーという役どころは結構しゃべるし。復活するに当たって、森谷さんとお話するなかで色々改善していただき、今回は3日でやろうと(笑)。内容も、若い頃にやっていたことではなく、今できる「THE3名様」になったと思いますね。
岡田:「みんながストレスのない状態で始めたい」という話をしてから動き出したんですよね。誰かが多少であっても不満や不安があると、僕らが純粋に楽しめない。僕らが楽しまないとお客さんも楽しめないだろうし。こういう時代になったから、演者が発信していくのもいいよねと。とにかく自分たちが楽しくやれたらいいねという話になりました。
塚本:これまでの全シリーズで、僕は今回が一番楽しかった。あの頃は20代だったし、次から次へと仕事が押し寄せてきていて、何が正解かもわからずにやっていたから。今回は素直にミッキーを演じていてすごく楽しかったんだよね。
佐藤:僕もそう。本当に楽しかった。もう次が撮りたくて仕方がないくらいですから。
佐藤:「THE3名様」ってコアなファンの方々がいてくれるから、僕らが想像する以上に期待が膨らんじゃっている部分があると思うんです。だけど、「ああ、これこれ」的な、3人のグダグダ感だったり、まっつんのTシャツとか、ミッキーのファッションだったり、基本的に以前と変わらないテンションで納得できる作品作りを意識しました。パフェおやじの存在もそうですよね。今回復活すると決まったときから、パフェおやじの回は絶対にやりたいと話をしていました。
森谷:パフェおやじの回は、どこに座って、どういう位置関係で撮るかという狙いは持っていたんですよ。ところが、3人が「違―う!」って。あれ? 今までこんなに楽しく撮っていたのに……って(笑)。
全員:爆笑
森谷:分かったことは、「THE3名様」を監督するというのは、並大抵のことじゃ出来ないということです。本当に大変でした(笑)。
佐藤:大変ですよね。意外と面倒臭い……、いや、こだわりのある3人ですから(笑)。
塚本:のほほんとやっていそうで、意外とね(笑)。
岡田:我の強い3人が集まっているからね。3人とも、全然引かないから(笑)。
佐藤:でもそれは、森谷さんだから甘えているという部分はあると思うんですよ。
森谷:そもそもの始まりは「ロッカーズ ROCKERS」(2003)の打ち上げですから。池袋の銀座ライオンだったことも覚えていますよ。佐藤さんが原作持参で「これをやりたいんです! 3人いますよ、僕ら!」って。
佐藤:すごいアプローチですよね。お願いしておきながら、具体的なことは結構決まっているという(笑)。「森谷さん、これすごく面白いんですよ! 僕、やりたいんです! しかもこの2人は義徳くんと高史です!」って……。
全員:爆笑
佐藤:そこから始まったものが、自分たちが想像した以上に皆さんに喜んでもらえたというのは本当にありがたいことです。
塚本:いまだに言われますもん。やっていなかった期間も含めて、「THE3名様」が好きでしたって。
森谷:「THE3名様」を見ていて業界に入ってきた人もいっぱいいるでしょう?
佐藤:12月の発表後に現場へ行ったら、若いスタッフさんから「佐藤さーん! ついにやるんですね!!」とかなりの熱量で話しかけてきてくれたので、「ちょっと落ち着け」と(笑)。ご存じだろうけど、そんなにめちゃめちゃ面白いわけじゃないぞ。ちょっと面白いくらいだぞと(笑)。
森谷:でもね、プロデューサーと監督とでは違う目線になるわけだけど、今回あそこまで仕上がったときに「よし! やった!」と思いましたよ。
森谷:みんな、この12年間で色々な作品に取り組んで、また「THE3名様」に戻ってきているというのが興味深い。僕が現場で感じたのは、あの頃と役者としての在り方が全く違う。
塚本:当時、もう子どもがいたんだよなあ。上の子が3歳くらいだったんですよね。
佐藤:これまで「またやりたいね」と言いながら実現できなかったわけですが、色々やって1周まわって本気でやりたいと思ったタイミングが今だと思うんですよ。今の経験値がある状態で、この年齢になった時にもう1度やりたい! という思いが一致したんでしょうね。
塚本:12年前というと、割と3枚目の役が多かった時期だと思うんです。だけど12年経って、おバカキャラみたいなのはやらなくなったこともあって、欲していたのかもしれませんね。俺は本来、こういうテイストが好きなの! みたいな。
岡田:もうやらないと思っていなかったから、当然ながら終わったとも思っていなかった。2人との関係は続いていたし、きっかけ次第だろうなと思っていたんです。この12年、色々なことがあったけれど、楽しいことが出来るのは幸せなことだなと感じますね。芝居をずっとやってきたけど、その土台とか関係なく、ただ人間性でセリフを言っているイメージ。芝居のテクニック云々ではなく、面白いという幅がすごく広がった気がします。
森谷:三者三様、向き合ってくる感じがすごいんですよ。以前は、一番大変なことを言い出すのはまっつん(岡田)だったんです。だけど、今回は「森谷さん、こうなんじゃないかなあ」ってまとめてくれている瞬間がいっぱいあって、監督としてすごく助かったんです。
佐藤:面白いですよね。同じ方向を見ているようでいて、3人の気になるポイントは結構違う。まとめる人は大変ですよ。2人OKだけど、1人だけ乗ってこないとかありますから(笑)。
塚本:どうなるんでしょうねえ?
佐藤:無駄な気がしますけどね。
全員:爆笑
佐藤:家で寝っ転がりながら、ひとりで見るくらいがちょうどいい作品だったりしますからね。ただ格好良く言ったら、大きな挑戦ですよ! 迫力とか、誰も求めていないわけですから(笑)。
森谷:DVDシリーズの頃は、大学の寮とかで、誰かの部屋に集まってみんなで見るというのが流行ったらしいですよ。
塚本:じゃあ、皆で見るというのも面白いかもしれないなあ。
佐藤:ぜひ体験してもらいたいですね。まだ我々も未体験の、スクリーンで観る3名様を!
塚本:各地に1泊で舞台挨拶に行きたいね。
岡田:弾丸じゃなく!
佐藤:全日行きたいくらいですよ。わざわざ劇場に来てくれる人のために。
森谷:そして、いずれ改めて「THE3名様」復活第2弾を撮りたいですね。
佐藤:復活して1回で終わっちゃうのは寂しいですもんね。年に1本新作を撮れたら最高だなあ。
森谷:4人で集まったのが秋でしたから、また秋口になるのかなあ。1年後くらいが、みんなのスケジュールの調整もつくんじゃないかなと思うんですよ。
塚本:確かにそうかもしれませんね。それに、観てくれた方々の反応もきちんと検証したいですよね。
森谷:そうそう。今回はクラウドファンディングもやりましたし、どんなことが起きて何が良かったのか、しっかり反応を見てから次に向かえるといいですね。
まだ宵の口! とばかりに、4人は“舌好調”でこの後もトークは活況を呈したが、この続きは劇場の大スクリーンで展開される“新章”に身を委ねながら、堪能してもらいたい。決して肩ひじ張らず、リラックスした状態で満喫することをお薦めする。
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