風刺に富み過激で辛らつ、性的執着を描き続けた漫画家のドキュメント「クラム」再上映決定、予告編
2022年1月12日 18:00

アメリカのアンダーグラウンド・コミックを代表する漫画家、イラストレーターで、風刺に富み、過激で辛らつ、ときに性的なオブセッションをあらわにした作品を描き続けたロバート・クラムを追った1996年公開のドキュメント「クラム」。このほど2月18日からの再上映が決定し、予告編がお披露目された。
カウンターカルチャーを象徴するキャラクター「フリッツ・ザ・キャット」「ミスター・ナチュラル」を生みだし、またジャニス・ジョプリンのアルバム「チープ・スリル」のジャケットを手掛けたクラム。60年代後半のアメリカにあって、一躍脚光を浴びる存在となったクラムが絵を描くことになったのは、兄チャールズの影響だと言う。
予告編でも、チャールズが描いたというコミックをみることができるが、ページをめくるにつれて、絵と文字の比率が逆になり、文字がどんどん増してくる。そして、最終的には細かい文字の羅列にだけになるのはかなり異様だ。劇中では、そのチャールズも登場する。一生のうちの大半を、家に引きこもっていたチャールズだったが、クラムが有名になった後でも、それは変わることがなかった。「若返ってもう一度やる直すためには、精神病院で過ごすしかないかも」と自身のことを語るチャールズ。映画ではクラムの人格形成に大きな影響を与えたチャールズの自室での姿も映す。
また、クラムの絵には、しばしば、性への強烈な執着をみることができる。クラムの絵の印象を、「女への敵意、それも性的な」「嫌気がさして、気分が悪くなる」とある女性は語る。それでも描き続けるクラムは、自身の中に内在するキャラクター達が「僕を突き抜けて紙の上に出だがっているんだ」と語る。現実社会では許されない欲望を具現化するキャラクターを世に送り出していることに対して「僕は監禁されるべきかもしれない」と自身について語っている。
予告編では、冒頭に「クラムは現代の(ピーテル・)ブリューゲルだ」「20世紀の(オノレ・)ドーミエ」「(フランシスコ・デ・)ゴヤだ」と、クラムを高名な画家になぞらえる人々の言葉が被さるタイトルバックで幕を開ける。続けて、過去に書いたコミックの原画が、かなりの高値な額で取引されていることを伝えている。ただ、自身の手元にはたいしたお金は入ってきていないと言う。「悪党どもめ」と吐き捨てるクラム。続けて、あるインタビューで答えている様子では、「現代人は何のコンセプトもない。あらゆるものが金儲けの道具だ」とその苛立ちを語っている。
監督は、クラムとともにストリングス・バンド「チープ・スーツ・セレネーダーズ」で活動し、のちにアメリカの人気コミック作家ダニエル・クロウズ原作の「ゴーストワールド」(01)を撮ったテリー・ツワイゴフ。1995年にはサンダンス映画祭グランプリ(ドキュメンタリー部門)、ナショナル・ボード・オブ・レビュー・ベスト・ドキュメンタリー賞、全米監督協会賞等数々の映画賞を受賞。また、アメリカの映画批評サイトであるロッテントマトでは95%、オンラインデータベースIMDbでもスコア8.0と高い評価を得ている。日本では95年の山形国際ドキュメンタリー映画祭での上映、96年の一般公開以来の劇場公開となる。
「クラム」は、2月18日から新宿シネマカリテほか全国順次公開。
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