【「キングスマン ファースト・エージェント」評論】歴史劇の重厚さとスケール感を増したマシュー・ヴォーンの新たな語り口
2021年12月25日 22:30
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恐れ知らずとはまさにこのことだ。英国紳士の伝統と格式にマシュー・ヴォーン印の発想を絡ませ、度肝をぬく化学変化を巻き起こしたのが1作目ならば、2作目は米文化との邂逅を経てとにかく所狭しと暴れまくり。そして、3作目で我々がいざなわれるのはいずれのタイプにも属さないヴォーン流の奇想天外な”歴史劇”である。
そもそも「キングスマン」シリーズのアイディアは60年代スパイ映画への憧憬から生まれたと言われるが、今回の舞台はそれよりずっとずっと前の第一次大戦期。グレタ・ガルボ主演の「マタ・ハリ」(31)やヒッチコック監督作「間諜最後の日」(36)といった作品の時代背景と同じ、いわば近代スパイ物の”最初期”を描こうというのだから、その野望がどれほど大胆なものであるか伺えよう。
いざ物語が始まるとヴォーンの本気度がビリビリ伝わってくる。広がりゆく壮大なランドスケープ。突如発生する哀しみのドラマ。かと思えば次の瞬間にはムードを一変させ、歴史上の人物たちをチェス盤のコマのように動かしながら、ヨーロッパ情勢にきな臭さが蔓延していく様をダイナミックに綴っていく。とにかくいろんなことが次々と起こるので世界史好きにはたまらないが、不安な人はあらかじめこの時代の概略を頭に入れておくと良いかもしれない。
一方、エグジーやハリーに代わって本作の原動力を担うのはオックスフォード公(レイフ・ファインズ)だ。戦わない平和主義者の彼がいかにして仲間と共に情報網を張り巡らし、闇の強敵に立ち向かうのか。名優ファインズから放たれるかぐわしいまでの格調高さと、真顔で荒唐無稽なことに身を投じる無邪気さ。その両面を一つの体で齟齬なく表現してしまうのだから、この人の魅力はやっぱり計り知れない。すでに一作目で触れられているように物語の終着地は「1919年、組織創設」にあるが、そこへ至るまでのドラマティックな心の葛藤もまた、彼ならではの大きな見せ場と言えそうだ。
砲弾と銃弾の飛び交うシリアスな戦場ドラマから悪の首領との決闘まで、とにかく全編にわたって感情の浮き沈みやヨーロッパ中を股にかけた距離移動が目まぐるしい本作。コミカルなところは思いっきりおかしく、引き締めるべきところはとことん重厚に。この語り口の豊穣さとスケール感にストーリーテラーとしてのマシュー・ヴォーンの進化を感じずにいられない、現時点における集大成的な一作である。
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