坂本龍一、33年ぶりにアニメーション映画音楽に挑戦 最近は「音楽が少ない映画が好き」
2021年12月8日 12:00
シリーズ累計200万部を超える宮西達也氏による絵本「ティラノサウルスシリーズ」を映画化した「さよなら、ティラノ」が、12月10日公開される。日本&中国&韓国の合作で製作、そして日本が誇るアニメーションスタジオ・手塚プロダクションがアニメーション制作を担った長編アニメーション映画だ。「王立宇宙軍 オネアミスの翼」以来33年ぶりにアニメーション映画の音楽を手掛けた坂本龍一に話を聞いた。(インタビュー・撮影は2020年3月に行われたもの)
決め手は、手塚プロさんからオファーが来たからです。手塚治虫さんの仕事なのかと思ってドキドキしていたら、違いましたが(笑)。子どもの頃から手塚プロのテレビ番組はたくさん見ていましたし、主題歌も歌っていました。作品も大好きで、手塚さんのお子さんたちとも交流があったので強い親近感を持っていました。日中韓合作とは素晴らしいことなので是非、力になれればと。
はい、難しかったです。この映画の観客の大多数が子どもで、ずいぶん小さな子たちだと思うのです。彼らにわかりやすい音楽を書く、ということは普段やっていないので難しくて。子ども向けの音楽っていうのは平凡になりがちだと思いますが、平凡にはしたくない。そうやって自分の首を絞めたのかもしれませんが、ありきたりのものは嫌だったんです。でもわかりやすく、悲しいところは悲しく、楽しいところは楽しく、ドキドキするところはドキドキさせるような音楽。図式的になりがちですが、それをどう作っていくかということが挑戦でした。
「AKIRA」や「攻殻機動隊」など子ども向けではない作品が多いです。見るとしたら、やはりちょっと大人向けのひねったものですね。
今回の仕事では、韓国人のプロデューサーと一緒に何度も韓国に行きました。政治的には難しい状況はありますが、民間レベルでは強い絆ができていますし、ちゃんと完成、公開できて良かったなという思いです。この映画のメッセージは、種族が違う恐竜同士が強い絆で結ばれるということなので、制作の僕らも同じようなストーリーで結ばれているような感じがしました。
映画音楽は40年近く作っていますが、当然、その時その時で変わってきます。当初は自分を出せばいい、自分の音楽が注目されれば……なんて思っていたこともあり、映画に沿ってというようなことは考えていなかったから、今よりずっと乱暴でしたね。それも、徐々に変わってきました。今は、音楽なんか目立たない方が良いんだ、くらい思っていて。音楽がなくても良い映画はたくさんありますしね。最近僕自身は、音楽がない作品だったり、非常に少なかったりするような映画が好きなんです。
子どもの頃はハリウッドでも何でも映画音楽が大好きでしたけどね。今は、逆に静かな映画が好きです。でも、その自分が仕事をするときは監督次第です。目立たないように作ったりすると、「いや、もっと興奮する曲を作ってくれ」みたいなことを言われますから。そこは頑張って、やはり映画は監督のものなので、引き受けたからにはなるべく沿うように作っていますね。どうしてもできない時はやめちゃいますけど。
台湾の作曲家で、リム・ギョン(林強)さんという方。僕より10歳若いかな? すごく好きなんです。台湾映画だけではなくて、香港や中国の作品もやっていて、友人でもあるんですけど、すごくいいなと思っています。あとは、サントラ専門の作曲家ではないですが「アンダー・ザ・スキン 種の捕食」のミカ・レビ。彼女はイギリス人で、当時は24歳くらいで。面白くていいですね。その後の「ジャッキー ファーストレディ 最後の使命」も良かったですね。
映画音楽の制作途中は、ああもうこれ嫌だ、やってられないと思うことは、実はほぼ毎回あります。その度にマネジメントがあたふたするっていうことはしょっちゅうです。でも、音楽自体をやめようと思ったことはないですね。
何かしらずっと頭の中で音が鳴っているんです。まあ、それは他の人の曲だったりもするんですけど、それが2~3日続くこともあって。同じ曲がずっとループしていてほんとに嫌だなあ、と思うことも。「どっか行け」と言ってもそうはいかないので困っちゃうんです(笑)。
あとは面白い音を常に探しているので、今、ここ(取材中)の空調がピシピシ鳴ってますけど、こんな風にいつどこから来るのかもわからないので、24時間体制で寝ていても、もし面白い音がしたら目が覚めるかもしれないですね。僕は本当に音に敏感すぎるところがあって。よく、人に聞こえない音も聞こえちゃうような子どもがいるじゃないですか、そういうタイプかもしれないですね。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。