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多発性硬化症を患ったセルマ・ブレアの闘いの日々と決断――ドキュメンタリー監督に話を聞く

2021年11月20日 09:00

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ドキュメンタリー映画「Introducing, Selma Blair(原題)」の一場面
ドキュメンタリー映画「Introducing, Selma Blair(原題)」の一場面

2018年、ある俳優が多発性硬化症を患っていることを、自身のInstagramで明らかにした。その人物とは「クルーエル・インテンションズ」「キューティ・ブロンド」「ヘルボーイ(2004)」への出演で知られるセルマ・ブレア。ニューヨークで開催された北米最大のドキュメンタリーの祭典「Doc NYC」(11月10日~11月28日:現地時間)では、彼女の日々の暮らしをとらえた映画「Introducing, Selma Blair(原題)」が出品された。会期中、監督を務めたレイチェル・フレイトへの単独インタビューが実現した。(取材・文/細木信宏 Nobuhiro Hosoki)

「Introducing, Selma Blair(原題)」では、ブレアが動作の衰え、体力の低下を実感するなかで「造血幹細胞移植(Stem Cell Transplant)」を受けるという決断を下す。ひとり息子のアーサーが精神的な支えとなり、メディカルスタッフ、友人、アシスタントたちの協力を得て、病と闘っていくさまをとらえている。

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フレイト監督がブレマに出会ったのは、多発硬化症と診断されてから9カ月後のことだった。

「セルマは、その時点でさまざまな多発性硬化症の薬を試していましたが、どの薬も効いていなかったんです。その後、造血幹細胞移植というものがあることを知り『現在の病気の症状を、ドキュメントしよう』と考えたそうです。そこでVanity Fair誌で仕事をしていたキャス・バード(製作総指揮)に『私のプライベートをドキュメントできる、信頼できる人物はいない?』と聞いたそうです。キャスは私の親友でもあったので、セルマを紹介してくれました。そこから、セルマととともに、彼女が思い描いた映画に関する会話を始めました。セルマは、その時点で造血幹細胞移植をすぐに受けることを決めていました。それから2カ月後。製作者を集めることができて、撮影をスタートさせることができたんです」

さらに、フレイト監督は脱毛症を患い、当時はスキンヘッド姿だったことも告白。病気を通じて、ブレアと密に繋がることができたようだ。

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被写体は、多発性硬化症を患う人物――ブレアの症状が悪化し、撮影がストップする可能性もあったはずだ。事前にどのような準備をしていたのだろうか。

「セルマの自宅は病院の近くにありました。もし何かあった場合には、すぐ駆け込めるようにしていて、それが主な対策でした。彼女と常にコミュニケーションを取りながらも、症状が出て調子が良くない場合には、病院が近くだったため、どうすれば良いのかがわかっていたんです。もっとも我々は、(普段の撮影のように)12時間も撮影したわけではありませんでした。そのため撮影中は、セルマに回復する時間を与えたり、あまりエネルギーを奪わないように短瞬間での撮影を心掛けていました」

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では、10歳の息子アーサーには、多発性硬化症について、どのように伝えていたのだろう。

「彼女がアーサーに多発性硬化症を伝えた時、私はその瞬間を撮影することはできませんでした。アーサーは、母の病状を受け入れ、彼女が疲れている日は、ひとりで遊んだり、とてもリラックスした態度でいる一方で、彼女のことを守ろうともしていました。彼らは互いを愛し合い、落ち着いた関係を保っていると思いました」

劇中では、ブレアが赤いソファに座り、さまざまなことを語り始める。だが、その途中で言語障害になり、思うように口が利けずに苛立ちを募らせ、とても不快な表情を浮かべることも。やがて、唐突に自分の病気を理解したかのように笑う――そんなシーンが存在している。

「あの光景を撮影できたのは“カメラを長回しにしたまま撮影をする”という私のスタイルの賜物だったと思います。実際に、我々は『カット』と言っても、すぐに録音のボタンを切らずにいました。あの映像を撮影できた日は、おそらく私のキャリアでもベストな日。よく覚えていますよ。2019年6月1日のことです、セルマが造血幹細胞移植のために、シカゴへ向かう際、しばらく父親と暮らすことになったアーサーに別れを告げにいきました。セルマはアーサーとドッジボールをしたり、プールにナイトガウンで飛び込んだり、お酒をやめた話をしてくれました。ようやくプールから出て、服に着替えると、あのソファでのインタビューに応じてくれたんです」

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そして、フレイト監督は同シーンを通じて「彼女の人生が展開していく過程をとらえたかった」と教えてくれた。

造血幹細胞移植の効果は人それぞれ。体質によっても異なり、必ずしも良くなるわけではなく、亡くなる可能性もあった。ブレアは、そんな点について懸念を抱かなかったのだろうか。

「躊躇ってはいましたが、それでも彼女はやるつもりでした。移植を受ける前、多くの人々から死ぬ可能性があることを告げられていたようですが、彼女が飲んでいた多発性硬化症の薬には効果が見込めなかったんです。だから、彼女にとって造血幹細胞移植が、唯一のオプションだったと思います。自らを危険にさらすことをいとわなかったんです」

最後に、本作を通じて、観客に感じとってほしいことを尋ねてみた。

「セルマのストーリーを通して、人々に自分自身を見つめてもらい、いかに人生は貴重で、乱雑でも美しいかを知ってもらいたいと思っています。今作は、最も困難な時期だとしても“楽しむこと”の重要性を表しているつもりです。そのことを、観客には持ち帰って欲しいと思っています」

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