【「エターナルズ」評論】ヒーローというより神々に近い。超越した目線で紡ぐ壮大な文明叙事詩
2021年11月13日 18:00

「See you down the road.(いずれまたどこかで会おう)」というセリフを別れ際の合言葉のように刻んだ「ノマドランド」(21)から1年も経たない内に、クロエ・ジャオの新作と出会える喜びをどう表現しようか。リアリズムからアメコミ世界へ。真逆に振り切れたこの大胆な選択からは彼女の可能性が無限に広がっていることがひしひしと感じられる。と同時に、マーベル側にとって彼女の抜擢は、MCUの語り口をさらに多様性に富んだものにしようとする象徴的な一手でもあるのだろう。
なるほど、「エターナルズ」はこれまでのマーベル映画の趣とはだいぶ異なる。実験的、野心的、壮大と、いくら言葉の衣を被せてもまだ足りないほど。ジャオ作品は夕陽や大自然といったテレンス・マリックを思わせる描写が多いことで知られるが、ならば本作は「ツリー・オブ・ライフ」(11)の折々に無数のヒーローが立ち現れる美しく幻想的な叙事詩とさえ言い得るのかもしれない。
いや、私はいまヒーローと書いたが、本作に限ってはむしろ「神々」と表現したほうがしっくりくる。現代から遡ること7千年前、地球上に出現した10人のエターナルズは、凶悪な捕食獣から人類を守ることを使命とし、文明を転々としてきた。
しかし永遠の命を持つ神々とはいえ、全知全能ではないし、長く生きれば生きるほど苦悩や葛藤は膨らむ。本作の興味深い点はまさにそこだ。特殊能力や外見の異なる多様性に満ちた彼らが、個々の感じたこと、信じるものに基づいて選択を下して生きようとする様は、年月の尺度こそ違えども、ある意味、人類の生き様そのものに思えてならない。
そんな物語に身を浸しながら、私の中では、ジャオ監督の過去作で、傷を負ったロデオ選手が人生の目的を静かに見定めていく姿や、故郷を失ったヒロインが季節ごとに絶えず車で移動し続ける姿がいささか重なったりもした。いずれも人生という果てしない路上をゆく旅人であり、最強の戦士セナ(アンジェリーナ・ジョリー)が「忘れたくない」と口にするように、彼らは共に寄せては返す記憶をしっかり抱きしめながら選択を繰り返す者たちなのだ。
マーベルとクロエ・ジャオ。油と水のように思えた両者が、アーティスティックな創造性のパレットの中で溶け合っていくのを感じた。そこにはアクションもあればスペクタクルもあるが、こみ上げるのは従来の爽快感や興奮と全く違う。むしろ森羅万象と一体化していくような余韻が広がりゆく中で、私にはふと、またあの別れ際の合言葉が聞こえたような気がした。

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