森山未來、久々の恋愛映画への意欲 原作者・燃え殻と“大人になること”談議
2021年11月7日 12:00
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ウェブメディアでの連載から始まり、2017年に書籍化され話題を集めた作家・燃え殻による小説をNetflix製作で映画化した「ボクたちはみんな大人になれなかった」。昔の恋人のSNSアカウントを見つけてしまった主人公の過去と現在、忘れられない恋人との出会いと別れを90年代の空気感とカルチャーを織り交ぜながら描いたエモーショナルな恋愛映画だ。劇場公開と同日の全世界配信日を前に、主人公のボク=佐藤を演じる森山未來と燃え殻が対談した。
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殺人鬼など特殊な役も演じてきたので、単に映画で切り替えができるなら……と明確な理由はありませんでした。でも、この映画の撮影の最中に、脳科学者の中野信子さんと対談させていただいて、ざっくばらんに「恋愛って何ですか?」と聞いてみたんです。
中野さんのお話では、進化の過程でヒトが4足歩行から2足歩行になって、頭の位置が変わることによって女性は骨盤の形や子宮の位置も変化し、出産にものすごい苦痛を伴うようになったと。で、恋愛も含めて出会いは、生殖、種の保存の営みですから、人と出会うことは、苦痛に直結することだと。けれど、出産の苦痛を考えて、出会いたくないとなると、いつまでたっても生殖にたどり着けない。その痛みを麻痺させるのが、恋愛感情で、いわば脳内麻薬みたいなものが分泌されるそうです。
それを聞いて、僕は、だから恋愛はキラキラ映画になるのか……と腹落ちしました。人と人とが出会うことや生殖行為は、遺伝子情報を交換すること。そのハイブリッドが子供。出会った人への興味、遺伝子や本能的な入り口として、出会いや恋愛があると考えると、それを僕は求めていたようです。キラキラ映画にならないように、なんて言っておきながら、キラキラ映画になることはおかしいことではないと、抽象的なものが、具体的な形で立証されてしまった。僕自身のジェンダーで言ったら、恋愛対象は女性で、そして、恋愛は人間同士がかかわるということでは一番エネルギーのいること。自分は恋愛映画というものを通して、それを感じたかったようです。
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あとは環境の変化を意識しました。例えば佐藤の20代前半の環境や対人関係などの狭さ。そこから相手も変わるし、人数も変わっていきます。自分の場合も、若い頃は自意識に強く絡めとられたり、世間とのかかわりが狭かったと思うんです。でも、次第にそういう見方や対し方だけでは成立しなくなっていく。もちろん、そのプロセスで失敗したり、ダメになったりして発見を繰り返すのですが、それは技術的なことというよりも、経験則。過去と比べるならば、あの時より今の自分の方が、人とかかわることの余白や受け止め方や投げ方が変わったし、それが“大人になる“ということであれば、今の方が全然ポジティブ。そういったことを想像しながらやっていました。
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だから結局、佐藤にとってはかおりが言った言葉がある種の呪いのようになり、うまく大人に脱皮できなかったけれど、かおりは本当は普通の子だったから、平然と大人になっていった……みたいなことなのかな、と思いました。
ある種の社会に絡めとられたり、迎合することによって、ちゃんと大人として社会人として働く――そういう意味では全員いびつながらも大人になっていったと思うんです。でも、“あの頃”の自分がうずいて、サイババだったり、1999年のノストラダムスを多少信じたい、みたいなガキのようなあの感じを思い起こしたくなる。「大人になれなかった」なんて言ってもはたから見たらおっさん、じじい、大人だよって。だからこそ「大人になれなかった」ってうそぶきたくて付けたようなタイトルです。
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映画の最後、原作の文章で書かれていたことを映像で表現します。「普通だな」と言ってしまえるのは、ちょっとうそぶいている感がなくもないけど、それを受容していく……大人であることは、決して悪いことではない、そういうメッセージがあるような気もしました。寛容になること、受け入れることって、難しいじゃないですか。行くところまで行くと忖度にもつながりかねない。忖度だって、今はネガティブな言葉として使われているけれど、本来は言わなくてもその人が必要なものを用意してあげる、というポジティブな意味だった。そういった世間の言葉の受け取り方も、“大人”っていうことに通じているような気がして。映画ですべて描き切っている気はしませんが、“大人”という言葉をネガティブに捉える空気はなくていいものだと思いますし、かかわる集団や関係値が変われば役割やバランスも変わる。人間にはそういう複雑な面白さがあります。
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