津田寛治、映画の中の日本兵は「現代を生きる我々のグルーブ感とシンクロ」 「ONODA」公開直前記者発表
2021年10月5日 19:00
1974年3月、終戦後約30年の時を経て帰還した小野田寛郎氏の実話を基に、フランス人監督アルチュール・アラリが映画化した「ONODA 一万夜を越えて」。公開直前記者発表会が10月5日、在日フランス大使館公邸で行われ、ダブル主演を務めた遠藤雄弥と津田寛治、共演の仲野太賀、松浦祐也、カトウシンスケ、井之脇海、イッセー尾形が登壇した。
第74回カンヌ国際映画祭「ある視点部門」オープニング作品に選出された本作は、終戦後も任務解除の命令を受けられないまま、フィリピン・ルバング島にて約30年間を過酷なジャングルの中で過ごした小野田とその仲間のサバイバル生活を描く。遠藤雄弥と津田寛治が小野田の青年期と壮年期をそれぞれ演じ、カンボジアの地で約4カ月の撮影に挑んだ。
「最後の日本兵」と呼ばれ、社会現象にもなった帰国までの壮年期の小野田を演じた津田は、「既にご覧になった方々からは大好評をいただいておりまして、一番多い意見は、『こんな日本兵は見たことがない』というものです。世界中で描かれる日本兵は第2次世界大戦での悪役としての日本兵だったり、日本で描かれるのはテンションの高い“大和魂”を持った兵士だったりするのですが、この映画で描かれる日本兵はそのどれにも属さない、稀有な存在の日本兵。それはここにいる若いキャストであったり、僕らだったり、現代の日本を生きる我々のグルーブ感とシンクロしているような気がする。劇場で今までないような体験をしてほしい」と呼びかけ、カンボジアでの撮影を述懐し「僕の人生の転機となった作品」と語った。
陸軍中野学校二俣分校の教官である谷口少佐を演じた尾形は、「現場は暑くて汗だくで、どうなることかと思いましたが、今日はみんなきれいな格好をして、こういった素敵な場所で会見できて良かった。コロナを潜り抜けてこの場にいるのが、この映画の生命力だと思います」と感無量の様子。そして、「見ている側が小野田の体験を体験してしまう。言葉ではなく体や皮膚に残って、今でもあちこちに鳴り響く。最年長の私ですら戦争を知らない世代ですし、すべて想像力で成り立っている作品。想像ができてしまう、ということは誰にでも想像できるということ。今我々がこの映画と出合うことは意義のあること」と完成作の出来に太鼓判を押した。
新型コロナウイルス対策の影響で来日が叶わなかったアラリ監督は、オンラインで会見に参加し「このコラボレーションは二度とできないでしょう。みなさんとこの作品が作れたことが私の誇り。長い時間を分かち合い、豊かな映画ができたことが幸せです」とメッセージを寄せた。
劇中の小野田を探すバックパッカーを演じた仲野は「アルチュール監督にとって2本目の映画で、スタッフはヨーロッパのいろんなところから来ていたり、カンボジアの方だったり。まるで冒険のような撮影だった。言語や国籍が違えど、ひとつの映画を作るということでみんなが一つになっていた。改めて映画作りの美しさを目の当たりにした。感情の機微を丁寧に引き出す監督で、人間を描くことに真理を持っている。優秀な監督は国籍や年齢に関係なく鋭いまなざしを持っていると思った」と国際的な現場での経験を振り返った。
遠藤は、日本や欧州とは異なる気候と食文化のカンボジアで、キャストやスタッフの多くが体調不良に陥り「満身創痍だった」と報告し、松浦、カトウ、井之脇らと実施した壮絶な減量エピソードも明かす。「毎日がクライマックスで、毎日が豊かな撮影で、キャスト、スタッフのみなさんのプロフェッショナルな思い、汗と涙の結晶です。コロナ禍という特殊で、時代の流れがうねっているフェーズ、分断されてしまうような懸念がある中で、人としてどう生きるべきかということを問われているような作品になった。是非劇場で観ていただき、何かが響いたら幸いです」と強く思いの丈を述べた。
「ONODA 一万夜を越えて」は、10月8日から東京・TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開。
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