盗聴防止装置「金魚鉢」とは? 60年代の技術と想像力が詰まった「クーリエ」スパイツール
2021年9月10日 15:00
ベネディクト・カンバーバッチが主演・製作総指揮を務める「クーリエ 最高機密の運び屋」から、スパイツールをとらえた場面写真が披露された。1960年代の東西冷戦下で実際に使われていたものを含み、当時の技術力と創造力に関心を覚えるようなツールの数々を紹介する。
舞台演出家として名高いドミニク・クックがメガホンをとった本作は、キューバ危機の舞台裏で繰り広げられた知られざる実話を基に、核戦争回避のために命を懸けた男たちの葛藤と決断をスリリングに描く。
在モスクワ米国大使館内に設置された盗聴防止装置のことで、壁や床、天井から完全に分離した空間を作り出し、音声を拾われる(盗聴される)ことを防止する役割を果たす。その見た目からか、通称「金魚鉢」と呼ばれ、劇中ではある極秘計画を伝える際に使用されている。
2000年代前半頃まで商業通信手段として主に用いられていた機器。暗号文を送ることも可能だったことから、本作では機密情報を送信する機器として登場する。5つ穴の「穿孔テープ」をカードリーダーに読み込ませると文章が出力されるという代物。
デジタル社会の現代においては、直径5センチ未満の超小型カメラも数多くあるだろうが、アナログ時代に最高峰といわれていたのがこのミノックスだ。劇中ではソ連側の協力者であるペンコフスキー(メラーブ・ニニッゼ)が機密情報を写真に収めて、アメリカ側に渡すために使用されている。
一見ただのテーブルに見えて、実は引き出しの側面にさらに隠し引き出しがあるという仕組み。いかにも機密情報を扱うスパイっぽい代物だが、こんなところに大事な情報を仕舞っておいて大丈夫なのかという疑問も多少残る。
予告編で「常に盗聴に警戒を」というセリフが登場するように、劇中では筆談による会話や、大音量の音楽を流し耳元で会話するシーンなどが展開される。ファンシーな星マークのシールで飾られた筆談ボードと、緊張感あふれる場面とのギャップもまた面白い。実はこのシーン、重要な局面へと繋がっていくのだが、その一連の流れは平凡なビジネスマンだったグレヴィル・ウィン(カンバーバッチ)がまるで本物のスパイのように見える必見のシーンになっている。
CIAのヘレンからウィンに渡されるネクタイピン。これを身に着けることで、ソ連側の協力者オレグ・ペンコフスキーにとっての「クーリエ(運び屋)」としての目印となるわけだ。しかし、スパイ素人のウィンはこのタイピンをまじまじと見定め、「毒矢を出せるとか?」と真顔で質問する。当時のスパイのイメージとウィンの愛嬌ある人柄が窺い知れる場面だ。
60年代当時に使用されていたスパイツールについて、徹底的なリサーチを行ったというクック監督は、「超小型カメラ(ミノックス)は実際に使われていたんだ。時代を先駆けるような高性能なカメラで、あんなに小さいのに本当に良質なんだ」と語る。さらに、盗聴防止装置についても当時存在していたもので、撮影現場では“バブル”と呼んでいたそう。「最初に使われていたのはモスクワの米大使館で、盗聴器がたくさん仕掛けられていて秘密の会議ができないために作られた。ただ、写真資料として残っていなかったので、想像力を働かせて映画オリジナルのデザインで作ったんだ」と説明している。
「クーリエ 最高機密の運び屋」は、9月23日から東京・TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開。
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