【「アナザーラウンド」評論】映画的なカタルシスに満ちた、ミケルセンのダンスが鮮烈なラストシーン
2021年8月27日 18:00

“血中アルコール濃度を一定に保てば仕事の効率が上がる”という理論を実践する、4人の高校教師たちの大胆で愉快な挑戦の物語だ。要は飲みたいだけだろ? というツッコミは勘弁願いたい。その後の展開は酔いが一気に冷めるくらい痛烈なのだ。
アルコール濃度チャレンジにトライするのは、マッツ・ミケルセン演じる歴史教師、マーティンと同じ高校に勤める同業の仲間たち。当初はそれまで退屈だった講義は熱を帯びて生徒たちを喜ばせ、冷え切っていた家庭生活は解凍されたかに思えたが、酒量を増やした途端、家族には見限られ、妻と激しい口論の末、家を出てしまうハメに陥る。やっぱり理論は危うい仮説に過ぎなかったのか。
酒は飲んでも飲まれるな。そんな使い古されたフレーズが一瞬頭を過ぎる。でも、今年のアカデミー国際長編映画賞を始め、各国の映画賞を総なめにしたトマス・ビンターベア監督の演出(&脚本)は、悩める中年男たちを簡単には見捨てない。酒をきっかけにして、彼らがそれまで目を背けていた現実と否応なく向き合い、挫折し、やがて克服する姿を描いて、人に対して温かく、同時に説得力のある提案を差し出すのだ。破綻した人生を再生するための一つの手段として、酒の力を借りることも有効だということを。
ミケルセンが俳優になって以降、長く封印していたバレエダンサーとしてのスキルを思いっきり爆発させるラストシーンは、生きる喜びと辛さが溢れ返り、深刻なドラマを劇的に締め括る映画的なカタルシスに満ちている。
そして、そんなミケルセンの背後では、ダメな教師たちを尻目に卒業面接を無事にクリアした高校生たちが、揃いの白い卒業帽を被り、トラックの荷台の上で大騒ぎしている。デンマークの教育の健全さが分かるそのシーンは、今まさに人生の荒波に漕ぎ出していく者と、うねりに飲み込まれ、足掻く大人たちの対比が鮮烈なベストショットだ。
(C)2020 Zentropa Entertainments3 ApS, Zentropa Sweden AB, Topkapi Films B.V. & Zentropa Netherlands B.V.
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