ロジャー・コーマンの下でキャリアを積んだ「ターミネーター」「ウォーキング・デッド」の女性プロデューサーがロカルノ映画祭で受賞
2021年8月12日 09:00
8月14日まで開催中の第74回ロカルノ国際映画祭で、「ターミネーター」「アビス」、TVシリーズ「ウォーキング・デッド」などのプロデューサーとして知られるゲイル・アン・ハードが、ベスト・プロデューサー賞を授与され、現地でトークを開催した。
ハードがハリウッドでもっとも成功した女性プロデューサーのひとりであることは確かだが、そのキャリアがロジャー・コーマン・プロダクションから始まったことを知る人は少ないかもしれない。もっとも、当時はプロデューサー志望どころかその仕事がなんたるかもよくわからず、「ただ仕事が欲しくて働き始めた」という。また「ターミネーター」誕生秘話や元夫、ジェームズ・キャメロンとの出会いについて、「ロジャーに『宇宙の7人』(1980)の現場を任されたものの、当時技術スタッフが周りにまったくおらず、ロジャーとすでに仕事をしていたジム(・キャメロン)にセット・デザイナーをやってもらったのです。その後「ターミネーター」の脚本を始めて見せたのがロジャー。彼は『自分のところのような低予算で撮るのではなく、ちゃんと大きな予算で撮るべきだ』とアドバイスをくれた。スタジオからは『こんな企画を二度と持ってくるな』と言われたこともありましたが、ロジャーはわたしたちを励まし続けてくれて、本当に感謝しています」と振り返った。
また、女性プロデューサーとして活動することの困難にも触れ、「今のように何人もプロデューサーがいるシステムではなく、わたしひとりだったときでも、スタジオからは『あの無礼な女は何者だ』と言われたこともあります。とにかくこの仕事は、めげずに信念を持って続けることが大事」と語った。
ロカルノでは8000人を収容する名物広場、ピアッツァ・グランデで「ターミネーター」が上映されるとともに、ハードが1999年に制作した「キルスティン・ダンストの大統領に気をつけろ」も上映された。本作は、公開当時は当たらず失敗作とみなされたものの、今観ても斬新で面白い、よくできたコメディだ。ニクソン元大統領のウォーター・ゲート事件と、思春期真っ只中の15歳の少女たちの成長物語を融合させるという大胆なアイディアで、ダンスト演じるヒロインの親友でニクソンに恋をしてしまう少女を、当時駆け出しのミシェル・ウィリアムズが演じている。監督は、NetflixのTVシリーズ「エミリー、パリへ行く」でもメガホンを握ったアンドリュー・フレミング。遊び心あふれるカラフルなコスチュームを含め、ふたりの女優の弾けた演技に魅了される。まだ無名だったライアン・レイノルズがちょい役で出演しているのも余興。
ハードは野心的な本作について、スタジオがたんなるティーンコメディとして夏にリリースしようとしたことや、子どもを対象にテスト試写を行おうとしたことなど、リリースに関する苦労を語る一方、「映画製作はチーム作業ですが、優秀なキャスティング・プロデューサーが、後に評価されるような素晴らしい新進俳優たちを探してきてくれたことも感謝しています」と語った。
現在「ウォーキング・デッド」シリーズで製作総指揮をとる彼女は、映画化に向けて脚本を準備中であることも明かした。(佐藤久理子)
PR
©2024 Disney and its related entities
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。