超過激な暴力描写に熱狂的支持! 前代未聞の中国国産アニメ「DAHUFA」監督が語る制作秘話

2021年7月22日 10:00


「DAHUFA 守護者と謎の豆人間」(7月23日公開)
「DAHUFA 守護者と謎の豆人間」(7月23日公開)

中国国産アニメにおける“前代未聞”の挑戦として知られている「DAHUFA 守護者と謎の豆人間」(7月23日公開)。光線彩条屋影業、好傳動画が製作、面白映画が提供した同作は、中国史上初の“年齢制限付アニメ”として注目を集め、過激な暴力描写で熱狂的な支持を得た作品だ。

王宮から失踪した皇太子を捜すため、奕衛(イーウェイ)国の守護者であるダフファーは国境を越え、とある謎の村に辿り着いた。ここの住民は自らの意志を持たず、喋らず、見た目も皆そっくりで、村中には不気味な気配が漂っていた。やがてダフファ―は、この村に隠された秘密へと徐々に近づいていく。

映画へのレイティング制度がなく、アニメ作品は子ども向けとされている中国本土において、制作側が「13歳未満の鑑賞はお控えください」と自主規制した事が話題に。中国公開時は約13.5億円のスマッシュヒットとなり、アニメファンから高評価を得ている。

今回、監督を務めた不思凡にインタビューを実施。企画の経緯、制作裏話、日本で公開されることへの思いを聞いた。


監督を務めた不思凡
監督を務めた不思凡

――まずは、本作の企画経緯について教えて頂けますか?

この映画に関しては、私自身のアニメ映像に対するこだわりを全部出しました。ある意味、作家性の強い作品だと言えるでしょう。正直に言えば、「こういうものに作りたい」という思いはありませんでした。たまたま「新しいものを作りたい」となった時、劇中で描かれているような要素が頭の中に浮かんできたんです。テーマとして選んだのは、当時の私が最も描きたかった「社会の停止」「人々の思考停止」。私も時々、考えが止まっているような感覚を覚えることがあります。

――中国では、現在でも「アニメ=子ども向け」という考え方が一般的だと思います。一方で「DAHUFA 守護者と謎の豆人間」は、完全に大人向けですね。この点については、どのようにお考えでしょうか?

これは中国のアニメ業界が長年直面している問題です。ただし「DAHUFA 守護者と謎の豆人間」も含めて、近年はさまざまなアニメ作品が話題になったため、アニメに対する理解が広がってきたと感じています。この傾向が続けば、より多くの人々がアニメを見るようになり、クリエイターたちはより良質な作品を作るために頑張らなくてはいけない。そうなることで、観客も、我々クリエイターも一緒になって成長することができるはず。中国経済が安定した成長を続けている限り、文化産業も発展していくでしょう。ただ、もう少し時間は必要かもしれません。

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――本作を見た観客からは「よく検閲が通ったものだ」という声があがっていました。中国国内の検閲については、どう考えているのでしょうか?

正直、そこまで深くは考えていませんでした(笑)。当初は配信用のアニメ作品として制作する予定だったので、劇場上映のことを全く考えていませんでした。だから、劇場上映が実現できたということが、本当に意外だったんです。映画としても、アニメとしても、「DAHUFA 守護者と謎の豆人間」は、新しい試みだったのかもしれませんね。我々のチームは、制作面で壁にぶつかった事もありました。その時に生じた負の感情が、(作品の中に)つい溶け込んでしまったかもしれません。

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――街全体のデザイン、キャラクターデザインは非常に大胆で新鮮さを感じました。デザイン面で特に意識したことはございますか?

うちのスタッフが、偶然粘土で面白い人形を作ったことが、すべてのきっかけとなりました。それを劇中の“謎の生き物”として登場させています。そして、助監督のひとりはグラフィティが好きで、よく描いているんです。その中のひとつが非常に魅力的だと感じ、本作の主人公・ダフファーが誕生することになりました。その他の人物、街のデザインなどは、この2つのキャラクターや脚本の内容を踏まえたうえで手掛けることになりました。

――特筆すべきは、セリフ量の多さ。独白のシーンも印象的です。

これに関しては、私個人の作家性というか、創作上の習慣なんです。おそらくダフファーのキャラクター性とも関係があると思います。彼は知恵を持っている賢者ですが、同時に色んな悩み事があります。戸惑いながら、さまざまな問題に対して、自分なりの答え、見解を示していきます。これは人の成長、ある意味、人類の発展だと言えます。制作中はセリフが多いということを意識していなかったのですが、中国での上映後、多くの観客に「主人公がうるさい」と言われました(笑)。

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――中国国内での上映も話題となり、今回日本でも公開されることになりました。改めて、本作への思いをお聞かせください。

先程も話しましたが、劇長公開自体が意外なことだったんです。本作での体験は、すごいことばかりです。今振り返ってみると、色々な問題、反省する部分がわかりますが、制作当時の私からすれば「納得の作品」でした。

多くの人の過去には、足りないこと、反省すべき点が見つかるでしょう。しかし、過去の失敗がないと、成長はできないと思っています。だからこそ、全力を尽くし、それが例え失敗だったとしても諦めず、次の作品へと導くことができたらいい――私は常々、そう思っています。

――監督ご自身についても教えてください。なぜアニメ業界に足を踏み入れたのでしょうか?

昔は、漫画家になりたかったんです。ですから、アニメーターになるとは思ってもいませんでした。当時の中国では、漫画家になる土壌はまったくなかった。漫画家として生計を立てることが難しい時期だったんです。私は、長い間、とある通信会社で働いていました。インターネットが普及した後、FLASHを使って、漫画を作り始めました。

その創作の場を通じて、多くの人々と出会い、仲間になりました。多くの視聴者からの好評を得たため、ずっと活動を続けることができたんです。最終的に漫画家になることはできませんでしたが、偶然が重なってアニメーターになることができたんです。

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――影響を受けたアニメ作家、その他の文化人がいれば、教えていただけますでしょうか?

多くの方々から影響受けています。最初に影響を受けたのは、連環画(中国で20世紀初頭に発行された、一連の物語を1ページ大の挿絵と見出し文で表現する掌サイズの絵本)、初期の中国アニメです。

日本のアニメにも影響を受けています。例えば、手塚治虫先生、鳥山明先生、井上雄彦先生、宮崎駿監督などがあげられます。昔の香港映画、ハリウッド映画、それと作家性の強い作品にも! とにかく色々な作品から影響を受けていますね。

――次回作の予定は決まっていますか?

今は新作のアニメ映画を制作しています。その次はまだ決まっていない状態です。ただできれば、さまざまな“変なこと”“面白いこと”にチャレンジしてみたいと思っています。

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