【「秘密への招待状」評論】“生みの母”と“育ての母”の想像を超える愛に包まれる
2021年6月27日 23:00

第79回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた、デンマークのスサンネ・ビア監督の「アフター・ウェディング」(2007)をご存知だろうか。オスカー女優ジュリアン・ムーアと、夫であるバート・フレインドリッチ監督が同作に惚れこみ、ハリウッドでリメイクしたのがこの「秘密への招待状」だ。ある家族の“秘密”が、ふたりの心をとらえて離さなかった。
思いがけないことで人生が交錯するのは、インドの孤児院で働くイザベルと、ニューヨークの実業家テレサ。イザベルはテレサに孤児院を支援してもらうため、ニューヨークを訪れるが、話の流れで半ば強引に、テレサの娘の結婚式に招待される。しかし、会場でイザベルが見たテレサの夫は、彼女の元恋人オスカーだった。さらに、新婦グレイスがオスカーとの間にできた実の娘であることに気付く。
オリジナル版の主人公である男性ふたりが、リメイク版では女性ふたりに変更され、ムーアがテレサ、ミシェル・ウィリアムズがイザベルを演じた。劇中では価値観も人生哲学も異なるふたりが、互いの存在によって「母になる」過程が描かれている。我が子を手放した罪の意識を抱え、その後は家族を持たずひとりで生きてきたイザベルは、テレサの導きでグレイスと再会し、母としての自分を取り戻す。
一方のテレサもまた、グレイスを育てることで、母としての喜びを知る。やがて、テレサのさらなる秘密が明かされるわけだが、その圧倒的な愛に「母とはこうも強くなれるものなのか」と、見る者の心は激しく揺さぶられる。ニューヨークでは木から落ちた鳥の巣のなかの卵、そしてインドでは母鳥がヒナに餌を与える巣が登場する。“生みの母”イザベル、“育ての母”テレサ、グレイスの関係を象徴しているかのようだ。
人生で誰もが犯す過ち、誰もが抱える弱さや脆さ。本作には、周囲に打ち明けられず、ひとり胸に秘めてきた感情が、誰かの手で解き放たれ、救済される瞬間がいくつも刻まれている。謎や秘密がちりばめられたミステリアスなストーリーのなかで、複雑な事情を持つ登場人物たちは、ともすれば憎み合い、傷つけ合う関係にもなりうる。しかし、すべてを洗い流し包みこむ、想像を超える愛が、家族を希望ある未来へと導いている。そして何より、ふたりの母親の選択は、決して容易なものではなく、とことん悩み苦しみ、心のうちで叫び声をあげながら成されたもの。2大女優の熱演から、そうした葛藤が垣間見え、人間という存在の奥深さが感じられる物語に仕上がっている。
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