オリンピックに伴う再開発で退去 都営アパート住民の最後を映すドキュメンタリー公開
2021年5月15日 10:00
1964年のオリンピック開発の一環で建てられ、東京2020オリンピックに伴う再開発により2016~17年に取り壊された都営住宅・霞ヶ丘アパートの住民の最後の生活の記録と、五輪によって繰り返される排除の歴史を追ったドキュメンタリー「東京オリンピック2017 都営霞ケ丘アパート」が、8月13日から公開されることが決定した。
明治神宮外苑にある国立競技場に隣接した都営霞ヶ丘アパートは、1964年のオリンピック開発の一環で建てられた10棟からなる都営住宅。平均年齢が65歳以上の高齢者団地であるこの住宅には、パートナーに先立たれて単身で暮らす人や身体障害を持つ人など様々な人たちが生活していた。団地内には小さな商店があり、脚の悪い住民の部屋まで食料を届けるなど、何十年ものあいだ助け合いながら共生してきたコミュニティであったが、2012年7月、このアパートに東京都から一方的な移転の通達が届く。
2014年から2017年の住民たちを追った本作では、五輪ファーストの政策によって奪われた住民たちの慎ましい生活の様子や団地のコミュニティの有り様が収められている。また、移転住民有志による東京都や五輪担当大臣への要望書提出や記者会見の様子も記録されている。監督・撮影・編集は、本作が劇場作品初監督となる青山真也。音楽は、NHKドラマ「あまちゃん」の音楽などを担当した大友良英。東京ドキュメンタリー映画祭2020で特別賞受賞している。
8月13日から、アップリンク吉祥寺ほか全国公開。
1964年のオリンピックの際に立ち退きがあったことを私は知らなかった。
今回の霞ヶ丘アパートのことも、オリンピックが始まったら歓声と共に忘れられてしまうのではないかという危機感からこの映画を撮り始めた。
国立競技場でイベントがあると、歓声がこのアパートの中まで響いた。夜には眠れなくほどの音量だったが、ある住民は「耳が遠くなった一人暮らしにはちょうどいい」と言っていた。
コロナウィルスにより歓声をあげられない時代になって、私の危機感は斜め上に逸れていったが、よりタチの悪い状況ではある。東日本大震災からの復興五輪と言っていたのに、いつのまにかコロナを乗り越える五輪にすり替わって、これまでに湧き起こったオリンピックの様々な問題が覆い隠されてしまった。
2021年4月末現在、コロナ禍でもオリンピックを強行しようとする政府の姿勢に対し、twitter等では「オリンピックより命が大切」の声が上がりはじめた。
この映画に映るアパート住民の何人かは移転後に亡くなっている。「命よりもオリンピックが大切」にされた結果だということは言うまでもない。
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