【「約束の宇宙」評論】仕事と子育ての両立、夢のための代償…職業の特殊性を超えた共感をこまやかに描く
2021年4月18日 10:00

国際宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士に抜擢されたサラ(エバ・グリーン)。女性、宇宙先進国ではないフランス人、未経験者と、宇宙飛行士界における少数派のハンデを3つも負った彼女が、打ち上げまで2カ月の訓練期間中に経験する様々な葛藤を、サラと同じ小学生の娘を持つアリス・ウィンクール監督がきめこまかく描く。
訓練を行うロシアのスターシティにやって来たサラは、アメリカとロシアの男性飛行士から観光客のように扱われ、代役の飛行士からは「さっさとやめな」的なプレッシャーをかけられる。彼らに実力を証明しようと頑張るサラは、男社会でサバイバルを強いられる女性の代表のようだ。さらに、シングルマザーのサラは、離婚した夫に預けてきた娘のステラに対しても良き母であろうと頑張る。が、仕事と子育ての両立は難しい。娘の電話に対応すれば訓練に遅刻する。訓練に集中すれば娘からそっぽを向かれる。両方こなそうとしてどちらもうまくいかなくなり、「もう無理!」とキレる寸前まで追い込まれるサラの心情は、発熱した子供と大事なプレゼンを抱えてオロオロする我々と変わりない。宇宙飛行士という職業の特殊性を超えた共感を、ウィンクール監督は上手に引き出していく。
しかし、それ以上に印象的なのは、サラが宇宙へ行く夢をかなえるのと引き換えに絶対にあきらめなければならない代償にスポットを当てた点だ。訓練中のわずか2カ月の間に、ステラには好きな男の子ができ、自転車の乗り方を覚え、骨折もする。それらすべてが自分のいない時空で起きたことに気づいたサラは、宇宙で過ごす1年の間にどれほど娘の人生を見逃すのだろうと、喪失の先取りのような感情にかられる。それでもなお彼女が宇宙を目指すのは、娘にとって誇れる母でありたいと願うからだ。そんな彼女をひとりの女性とみなし始めたステラの心の成長が、代償の対価としての輝きを放つ。
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