吉田恵輔監督、撮影現場にぬいぐるみを置く理由は? 東出昌大は“吉田監督”違いのミスを告白
2021年3月31日 19:00
「ヒメアノ~ル」「犬猿」の吉田恵輔(吉はつちよしが正式表記)が監督、脚本を務めた完全オリジナル作品「BLUE ブルー」のトークイベントが3月30日、都内で行われ、東出昌大と吉田監督が登壇。1時間たっぷりと本作について語り合った。
吉田監督が30年以上続けてきたボクシングを題材に、成功が約束されていなくとも努力を尽くす挑戦者たちの熱い生き様を描いた青春映画。情熱はあっても才能が無い、試合には勝てない主人公・瓜田を松山ケンイチが演じ、東出は同じジムに所属する、強さと才能を合わせ持つ後輩・小川を演じている。
初の吉田組について、東出は「監督って現場になぜかぬいぐるみを置いていて、いつもそのぬいぐるみを撫でているんですよ(笑)。あれは精神安定の役割を果たしていたんでしょうか?」と、ずっと気になっていたことを告白。吉田監督は「どの現場でも置いていて、なんかぬいぐるみを持ってたら大きな声で怒鳴りづらいじゃない? わーっと声をあげそうになっても、“あ、ぬいぐるみ持ってるんだから冷静な言い方にしなきゃ”と思いとどまれるんだよね(笑)。あと、ぬいぐるみを持ってるだけでヤバそうな感じが出るから、これで若手の役者とかをびびらせてやろうかなって(笑)」と理由を明かした。
ボクシングを続けてきた吉田監督だからこそ描けたリアリティについて、東出は「小川はパンチドランカーの症状が出てくるので、役の参考にするために、症状にまつわる実際にあった話などをいろんな方々に聞いたんですが、まさに脚本に書いてある通りの話でした。それで、改めてこれは監督が本当に30年ボクシングを続ける中で見てきたものなんだなと感じました」と語る。
吉田監督は「ボクシングっていうとカッコよくて華やかで、爽やかな青春映画にしたくなるかもしれないんだけど、現実は危険もあるし、リスクを背負って戦っているんです。自分がやっていると、カッコいいところだけをくり抜いて描くということはできないですね。なるべく現実と向き合うような作品にしました」と、リアリティを追求した脚本について言及する。
さらに、細かいボクサーあるあるも盛り込まれているようで、東出は「例えば僕が演じたものでいうと、試合で勝った後のシーン。皆さんボクシング映画で、試合後に勝者がカッコよくリングのロープに駆け上って、拳を掲げるシーンを見たことがあると思うんですが、僕はよろけてロープに引っかかりながら上っていて不恰好なんです。実際の試合だと、終わった後すぐなのでボクサーは足がフラフラだからあんなにカッコよく登れないらしいです」と説明。
また、東出は「(柄本)時生が演じる楢崎と彼のおばあちゃんのシーンはすごく印象に残っています。楢崎はモテたくてボクシングを始めて、キャラクター的にもコミカルな部分がある役なんですが、そのおばあちゃんとのシーンは本当に素晴らしくて僕はそこで泣きました。改めて良い役者さんだなと思いました」と称え、「松山さんと時生以外に、もう一人のボクサーの生き様も描かれていて、それが守屋(周徒)くん演じる洞口というボクサーなんですが、彼のキャラクターも良かったです」と、4人目のボクサーについても言及。
吉田監督は「守屋くんは5年前くらいに俺のワークショップに来ていて、『どうやったら監督の作品に出れますか?』と聞かれたので、今度ボクシング映画撮りたいからボクシングをやっておいてとお願いしたんです。しばらくして、『もう2年間ボクシングやりましたけど、どうなりましたでしょうか?』って連絡が来たんだけど、その時はまだ作品が決まっていなかったから続けといてってお願いして、結局彼は4~5年くらいすることになったんですよね(笑)」と洞口役のキャスティング秘話を明かした。
最後に、東出は「実は僕、初号を観終わった後すごく感動して、普段はそんなことしないんですけど、すぐ監督に電話しなきゃと思い、『BLUE ブルー』すごく良かったですって電話したんです。そしたら『ブルーって何?』って言われて。興奮して間違って、吉田大八監督に電話かけてたんですよね(笑)」というエピソードで笑わせ、「まずはボクサーの方々に観ていただきたい。華やかでカッコいいところだけを描いたものではないから、きっと“俺たちの思いをよく表現してくれた”と思ってもらえるはずです。そう言っていただけるだけの自信があるし、そこまでの役作りや掘り下げができたと思っています。そんな作品を一般の方に観ていただいたときにも、何か爪痕を残せればと思います」と監督との1時間に及ぶ熱いトークセッションを締めくくった。
「BLUE ブルー」は、4月9日から東京・新宿バルト9ほか全国公開。
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