父親の愛の裏にある“ねじれ”がお気に入り――父子の逃避行描く「旅立つ息子へ」監督が語る
2021年3月23日 13:30
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イスラエルの名匠ニル・ベルグマンの最新作「旅立つ息子へ」が、3月26日から公開される。父と子の繊細な関係を描いたベルグマン監督が、本作のテーマや、日本の観客への思いを語った。
本作は、自閉スペクトラム症の息子と父親の絆を描く人間ドラマ。田舎町で暮らしてきたアハロンとウリの父子が引き離されることになり、父親は息子を連れて逃げることを決心する。
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ベルグマン監督は、父親を失った家族の崩壊と再生を描いた「ブロークン・ウィング」で長編デビューし、第15回東京国際映画祭でグランプリを受賞。2作目「僕の心の奥の文法」では、思春期の心の揺れと大人への抵抗を描き、第23回同映画祭で2度目のグランプリを受賞した。長編5作目となる本作は、脚本家ダナ・イディシスの自閉症スペクトラムの弟と父親をモデルにしている。コロナ禍の影響でイスラエルでの公開の目途はたっていないが、ベルグマン監督にとっても思い入れの深い日本で先に公開を迎えることになった。
自閉スペクトラム症を扱っているものの、ベルグマン監督は「シンプルに“父親”を描きました。私自身、初めて父親になった日に息子を見て、心が震えたからです。この子は世界で一番、おだやかで優しく、壊れやすい存在だと。私は危険な世界から、この子を守れるだろうかと。本作のアハロンも同じことを考えたはずです」と、自身が父親になった経験を重ねた。
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親子を描く上で意識したことについては「息子を守ろうという父の思いは、国境や文化を越えて共感を呼ぶものだと思います。危険な世界から愛しい誰かを守るというテーマは、身近なものですからね。私は劇中にある“ねじれ”がとても気に入っています。父親は息子のためにキャリアを捨てたのではなく、自分の繊細かつもろい性格ゆえに、子育てという盾を手にして現実逃避したのです。実は息子を利用しているのです。アハロンを苦しめる葛藤は、人生に悩む人々の共感も得られると思います」と解説する。
好きな日本の映画について尋ねられると「小津安二郎や黒澤明といった名匠はもちろん、滝田洋二郎監督、北野武監督、そして是枝裕和監督を尊敬しています。イスラエルで最も有名な映画評論家の1人から、本作と是枝監督の作品を比較され、とても誇りに思いました」と明かす。
最後に、日本の観客へ向けて「この映画では、日本的なものを感じてもらえると思っていますが、それが何かは私はうまく説明することができません。きっと皆さんの方が発見し、理解してもらえるものと信じています。この映画を見て、共感して、楽しんでもらえますように願っています。そして近い将来、お会いできる日が来ることを心待ちにしています」とメッセージを送った。
「旅立つ息子へ」は、3月26日から東京・TOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開。
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