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【「私というパズル」評論】説明のつかない悲劇、一瞬にして崩れる絆。それでもこれは希望の物語だ

2021年3月7日 11:00

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「私というパズル」
「私というパズル」

人は何かを選択しながら生きている。何を食べ、どこへ行き、何をするのか。この映画の主人公マーサ(バネッサ・カービー)は、橋の建設現場で働くショーン(シャイア・ラブーフ)をパートナーに選び、彼との間にできた子どもを自宅で出産すると決めた。その選択の先に起きた子どもの死という現実と、マーサはどう折り合いをつけるのか? 7カ月におよぶ喪の仕事を、家族関係の変化と共に追っていく。

劇中、ショーンがタコマナローズ橋を話題にする場面が印象的だ。世界で三番目に長い橋として1940年に建設されたこの吊り橋は、完成から4カ月で崩落した。推定された原因は、自励振動。事故調査委員会は、設計にも施工にも不備はなく、想定外の動的な力が崩落を招いたと結論づけた。同じように、マーサとショーンの出産計画も万全だった。が、予定の助産師が来られないなど想定外の動的な力が働き、不幸な事故が起きる。そして、絆という名の橋が崩落する。

説明のつかない悲劇は、人をいっそう苦しめる。マーサは自分を責め、どこで選択を間違えたのかと自問せざるをえなくなる。しかし、選択の間違いを認めることは、高圧的な母親(エレン・バースティン)に逆らう道を選んできた自分を否定することになる。だからマーサは心に蓋をし、最初から子どもが存在しなかったかのようにふるまうが、その真意が理解できないショーンとは気持が噛み合わなくなる。築くまで長い時間を要するのに、崩れるのは一瞬。橋も絆も同じだ。

この映画には、助産師の責任を問う裁判劇の要素もあるが、裁判は、マーサに事実を気づきかせるきっかけにすぎない。その事実とは、彼女の子どもが確実に存在したということ。何かが無くなるのは、それが有ったことの証でもある。だからこそ、無くなったことを悲しむより、存在したことに感謝したい。少なくともそうできる人間になりたいと、この映画は思わせる。

崩落したタコマナローズ橋は10年後に再建された。りんごは食べれば無くなるが、種を発芽させれば木となり、実をつける。絶望の物語ではなく、希望の物語として閉じるところに、この映画の最大の魅力がある。

(矢崎由紀子)

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