第71回ベルリン映画祭金熊賞はルーマニアのラドゥ・ジュード監督作 セックステープ流出騒動描く風刺コメディ
2021年3月6日 13:00

3月5日(現地時間)までオンラインで開催された第71回ベルリン国際映画祭の受賞作品が発表になり、金熊賞はもっとも賛否の分かれたルーマニアのラドゥ・ジュード監督作、「Bad Luck Banging or Loony Porn」に渡った。また審査員グランプリを、3話のオムニバス形式により人間の深い心理を巧みに掬いとった濱口竜介の「偶然と想像」が受賞した。
今年の審査員は、過去に金熊を受賞した面子でまとめられた、モハマド・ラスロフ、イルディコー・エニェディ、ジャンフランコ・ロッシ、ナダフ・ラピド、アディナ・ピンティエリ、ヤスミラ・ジュバニッチの6人。素直な感動作に軍配は上がりにくいと予想されたが、それにしても金熊作品は、冒頭からポルノまがいのベッドシーンで幕を開ける強烈な風刺コメディだ。パンデミック最中の撮影環境を反映して、俳優はマスク姿で登場。ジュード監督によれば、「セックスの滑稽な面を示しつつ、リアリティを追求した。マスクも俳優たちの安全性を守ると同時に、現在をそのまま反映させようと思ったため」という。セックステープが流出し大騒動になる女性教師と生徒の親たちの姿を通して、現代社会の不条理や人間の欺瞞が描かれている。

監督賞を受賞したのは、ハンガリー映画「Natural Light」で、兵士の虚しい心境を描いたデネス・ナギー。審査員賞には、ドイツ中部の小学校の型破りな教師とその生徒たちの交流を追ったマリア・スペス監督のドキュメンタリー、「Mr Bachmann and His Class」が輝いた。脚本賞はホン・サンスの新作「Introduction」に、芸術貢献賞はNetflix制作のメキシコのドキュフィクション「A Cop Movie」に送られた。

また今年から男優、女優の性別をなくし、主演賞と助演賞が設置された演技部門では、マリア・シュラーダー監督作「I'm your man」のマレン・エッゲルトが主演俳優賞に、ハンガリー映画の「Forest I See You Everywhere」のリラ・キズリンガーが助演俳優賞に輝いた。男優ではグザビエ・ボーボワの「Albatros」に主演したジェレミー・レニエや、ドイツ映画のトム・シリングの下馬評高かったが、「男優賞」のカテゴリーがなくなったがためにチャンスを逸した形となった。
今年初のオンライン開催となったベルリンだが、プレスの立場からすれば、大型映画祭ゆえの困難が様々な点で現れていたと言わざるを得ない。まず製作者サイド、とくにスタジオなどのメジャー系がオンライン出品を嫌がるという点だ。それがセレクションに影響することはもちろん、出品したにもかかわらず、映画祭公認のジャーナリストたちが作品を視聴できない(つまりオンラインに上げられない)ものも数本あった。それでは映画祭側にとって選んだ意味がない、というのが正直なところだろう。

たとえばこれが、コンペは長編2作目までに限るロッテルダム映画祭のようにはっきりとした基準があったり、インディペンデントな作家性を押し出すロカルノ映画祭のようなカラーがあるならまだ絞りやすいが、カンヌ、ベネチア、ベルリンクラスの質と量の双方を求める映画祭の場合、痛手は大きい。
また今回はデータ流出を恐れるあまり、視聴リミットが各作品24時間しかなかったことも、実質的とは言いがたい。これでは観る側はコンペ部門を追うだけでも精一杯で、せっかく集められた作品群が、多くの人に十分に観てもらえないという矛盾が起きる。
いずれにしても、パンデミックの状況が改善され、再びフィジカルな映画祭に戻れる日が早く訪れることを願うばかりだ。(佐藤久理子)
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