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【「ディック・ロングはなぜ死んだのか?」評論】一見バカげた映画のようでいて、なんとも切ない“不安”と“弱さ”の物語

2020年8月2日 18:00

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誰もが感じている“不安”と“弱さ”の物語
誰もが感じている“不安”と“弱さ”の物語

[映画.com ニュース] 無人島で遭難した男が、オナラをこきまくる死体に乗って、オナラパワーで大海原に乗り出す! 改めて説明してもどうかしている笑撃のオープニングで世間の度肝を抜いた「スイス・アーミー・マン」のダニエル・シャイナート監督(ダニエル・クワンと共同名義)が、待望の新作でもとんでもない展開をブッ込んできた。

タイトルの通り、映画の冒頭で「ディック・ロング」なる男性の怪死事件が発生! 平穏なはずの田舎町で、あまりにも雑な隠蔽工作が繰り広げられる犯罪コメディなのだが、まずタイトルからしてシモネタ。「ディック・ロング」を日本語にすると「チ◯コデカイ」さんなのだから、いきなりの不謹慎ギャグである。

しかしすでに「スイス・アーミー・マン」をご覧の方は、どれだけ不謹慎ギャグを連発しようとも、根底には優しい眼差しがあったことを覚えているはずだ。シャイナートが自分の故郷であるアメリカ南部に立ち返って撮った本作は、コーエン兄弟の「ファーゴ」をさらに行き当りばったりにしたようなブラックコメディだが、愚かなことをしでかす人間たちへの圧倒的な共感と優しさで貫かれている。

「一体、ディック・ロングはなぜ死んだのか?」というミステリーは、実はこの物語の本筋ではない。ディック・ロングの悪友たちの右往左往を見ていれば、バカバカしいことの真相は序盤からぷんぷん匂ってくるし、謎解きがクライマックスになるわけでもない。むしろ本作の核は、事件の隠蔽に走り回るディック・ロングの悪友たちが「一体なにを守ろうとしているのか?」という心理劇だ。

主人公の原動力は、社会からはじき出されたり、家族を失ってしまう不安かも知れないし、他人には見せられない“本当の自分”が晒されることへの恐怖かも知れない。いや、“本当の自分”って何なのだ? 妻と一緒にいる時の自分、気のおけない友人たちといる自分、愛する娘の前で父親として振る舞う自分、仕事の場やコミュニティの中での自分。人間が他人と関わりを持つ社会的な生き物である以上、誰もがいくつもの顔を持っているし、本人さえ“本当の自分”なんてわからずに生きているのではないか?

タイトルがシモネタでも、監督得意の不謹慎ギャグがちりばめられていても、これは紛うことなく、誰もが感じている“不安”と“弱さ”の物語だ。一見バカげた映画のようでいて、同じ“弱さ”を共有できる誰かに出会える、なんとも切ない感動作なのである。

(村山章)

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