セレブ妻たちの空虚なマウンティング合戦を描く「グッド・ワイフ」監督、「男女平等権が上流階級出身の女性たちに阻まれてきた」
2020年7月9日 15:00
[映画.com ニュース]メキシコの富裕層の主婦たちの戦いを描き、2019年メキシコ・アカデミー賞で主演女優賞など4部門を受賞した社会派ドラマ「グッド・ワイフ」が、7月10日公開される。アレハンドラ・マルケス・アベラ監督が作品を語った。
本作はアベラ監督がメキシコの著名な作家グアダルーペ・ロエザの小説から着想を得て製作された。ロエザは、メキシコのアッパークラスや1985年以降のメキシコ民主化への批評家として、鋭い視点で特権階級の人々の生態をあばき出してきた。
アベラ監督は小説の魅力を「35年前、グアダルーペはメキシコの上流階級のダイナミクス、具体的には彼女が自身の社会的サークルで目にしてきた階級・人種差別について語ろうと決意しました。彼女は物語を通して、たっぷりのユーモアを交えてこれらを記録し、共有してきました。自身の立場を表明し、さらに重要な議論の場を開いてきた彼女を尊敬しています。誰もが気軽に読むことができる、その変わらないポップなスタイルや、富や権力というものを分かりやすく説明しようとしてきた点も大好きなところです」と説明する。
実業家の夫と3人の子どもとともに、高級住宅街で暮らすソフィアが主人公。彼女は贅を尽くしたパーティを開いて夫の財力を誇示し、新入りの女性にライバル心を抱くなど、セレブ妻たちのコミュニティ内で女王のように君臨。しかし、メキシコで歴史的な経済危機が到来し、ソフィアの完璧な世界が崩壊していく。
「こうした作品世界に近づくために、私はもっとドラマチックな方法をとりました。おそらく、この35年間で物事がすっかり変わってしまったせいかもしれません。こうしたタイプの登場人物たちを、差別とプライドの対立として機能しなくなるところまで嘲笑することに私たちが慣れきってしまったのだと考えています。時々それが逆効果となり、結局のところ単に彼らが非難され、罪を贖うような結果で終わってしまうこともあります」
1982年の経済危機を描いた本作、映像表現についてのこだわりについては「私は80年代に生まれ育ったので、この時代には多くの思い入れがあります。私にとって一番重要なことは、見た目にとらわれるのではなく、リアルに描くこと、小道具や衣装が重要なテーマを邪魔しないようにすることです。撮影監督のダリエラと相談して、あからさまに1980年代のような映像を目指すのではなく、例えばズームやフィルターといった当時を彷彿とさせるような技術的要素は使おうと決めました」と工夫した。
現在も世界では経済危機と崩壊がどこかで起こっている。メキシコの1982年当時と今の女性たちの間にどんな共通点があるのだろうか。
「メキシコは社会的不平等によって分断され、傷を負っています。それは当時も今も変わっていません。人々は絶えず社会的・経済的地位を手に入れるために這い上がろうとしていて、それが実現されると今度はその他の人々を見下す傾向にあります。これは全てが人種や富によって決まっていたスペイン植民地時代から続く風習かもしれません」と振り返る。
そして、「35年たった今も、メキシコの上流階級出身の女性たちはほとんど変わっていません」と現状を憂う。「私にとって憂慮すべきことは、男女平等権をめぐり女性たちが勝ち取ってきた戦いの多くが、こうした上流階級出身の女性たちによって阻まれてきたことです。変化が起きているとはいえ、彼女たちはいまだに多くの人々にとってロールモデルであり続けています。夫へ依存し、表面的な人間関係を築き、そして頼りなく、助けが必要な存在でいることが“良い女性”の条件だとする考え方が、多くの女性たちがクラブの一員でいるために支払い続けている代償なのです」と持論を述べた。
「グッド・ワイフ」は、7月10日からYEBISU GARDEN CINEMAほか、全国順次公開。
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