第70回ベルリン国際映画祭開幕!新ディレクター就任で社会派の要素薄れる
2020年2月22日 14:00

[映画.com ニュース] 今年で70回目を迎えたベルリン国際映画祭が、2月20日(現地時間)に開幕した。ドイツでは前日となる19日、フランクフルト郊外のハーナウで、人種差別者による銃撃事件により10人の死亡者が出たため、開幕式では1分間の黙とうが捧げられた。
今年オープニングを飾った作品は、ジョアンナ・ラコフの原作「サリンジャーと過ごした日々」を映画化したフィリップ・ファラルドー監督による「My Salinger Year」。90年代のニューヨークを舞台に、J・D・サリンジャーを抱える老舗出版社で、詩人になることを夢見ながら新米秘書として働くヒロインが、自分の生き方を見つける物語である。ヒロインを「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」で注目されたマーガレット・クアリーが演じ、彼女のボスとなる出版社の社長にシガニー・ウィーバーが扮する。原作のフレッシュな視点に惹かれたというファラルドー監督は、ヒロインに寄り添った、瑞々しい魅力溢れる作品に仕立てた。

今年のベルリンは、19年間ディレクターを務めていたディーター・コスリックが引退し、元ロカルノ国際映画祭のディレター、カルロ・シャアトリアンと、エグゼクティブ・ディレクターのマリエッテ・リーセンベークというペアに交代した。それに伴い、新たに「インカウンター」と名付けられた、より先鋭的な作品を紹介する部門が創設された一方、ベルリン名物であったキュリナリー部門がなくなるなどの変化が見られる。人気の高かったキュリナリー部門の廃止を嘆く声も聞かれるが、プログラム担当のシャトリアンは、「映画をトピックで選ぶのではなく、作品として評価したいため」と語っている。

18本並んだコンペティションも、これまでのベルリンの特徴であった社会派の要素を感じさせるものは少なく、アベル・フェラーラー、フィリップ・ガレル、ツァイ・ミンリャン、ホン・サンスら、どちらかといえば映画愛好家に支持される作家主義的な監督が目立つ。
日本映画はコンペティション部門にはないものの、ジェネレーション14プラス部門に諏訪敦彦監督の「風の電話」、フォーラム部門に想田和弘監督の「精神0」、フォーラム・エクスパンディド部門に田中功起監督の「抽象・家族」が入選した。

全体的に、大きな映画祭に必要とされるスターやビッグネームの並ぶハリウッド映画なども、例年に比べると少ない印象だ。注目作は、ベルリナーレ・スペシャル・ガーラで上映される、ジョニー・デップが水俣病患者を撮影した写真家ユージン・スミスに扮する「MINAMATA」や、ロベルト・ベニーニ主演、マッテオ・ガローネ監督の「PINOCCHIO」あたり。果たして、今年の映画祭はどんなカラーになるのか。その評価は、2月28日の授賞式とともに下されることになるだろう。(佐藤久理子)
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