精神0
劇場公開日 2020年5月2日
解説
ドキュメンタリー監督の想田和弘が「こころの病」とともに生きる人々を捉えた「精神」の主人公の1人である精神科医・山本昌知に再びカメラを向け、第70回ベルリン国際映画祭フォーラム部門でエキュメニカル審査員賞を受賞したドキュメンタリー。様々な生きにくさを抱える人々が孤独を感じることなく地域で暮らす方法を長年にわたって模索し続けてきた山本医師が、82歳にして突然、引退することに。これまで彼を慕ってきた患者たちは、戸惑いを隠しきれない。一方、引退した山本を待っていたのは、妻・芳子さんと2人の新しい生活だった。精神医療に捧げた人生のその後を、深い慈しみと尊敬の念をもって描き出す。ナレーションやBGMを用いない、想田監督独自のドキュメンタリー手法でつくられた「観察映画」の第9弾。
2020年製作/128分/G/日本・アメリカ合作
配給:東風
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2020年5月31日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
誰にでも老いはやってくる。仕事も辞めなければいけない。精神科医として患者に信頼されていた山本昌知氏の引退は、多くの人にとって心の支えを失うに等しいかもしれない。それぞれの患者との最後の診察は患者の不安と今までの感謝の気持ちが溢れている。本作は精神科医としての最後の日々をおくる山本氏と、妻の芳子さんとの静かな生活をメインに作られている。芳子さんは認知症をわずらっている。山本氏はそんな妻を優しく支え続ける。ただ、来客をもてなすだけ、お弁当を食べるだけのシーンもとても美しく感じられる。長年連れ添った2人の呼吸が美しいのだ。ラストのお墓参りのシーンは不思議と涙が溢れる。
老いとはどういうことか、人生の幕引きをどのように過ごすのか。それはいつか誰もが直面する問題だ。最後の時をこのように穏やかに過ごせる人生はきっと素晴らしいものに違いない。
2021年6月7日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
町の精神科医、山本昌知氏も82歳、妻も弱ってきており、引退を決意する。
頼りにしていた患者に不安が広がる。
老夫婦の生活が丁寧に描かれ、高齢化社会の不安で胸がざわつく。
2020年7月28日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館
認知症になった妻を介護しながら医師を続けてだけど、無理になって医師を辞めた夫のドキュメンタリー映画。
車も運転されてたけど、いつまで出来るのだろう。
そんなに遠くない今後のことを考えさせられる作品だった。
2020年7月3日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
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「観察映画」初体験でした。
それは一言で言えば『ガチンコ勝負』
一般の映画は、何を見せるかをしっかりと練って提供する「プロレス」と同じエンターテインメント。
そしてこの映画は、リングとルールだけ与えられる中で闘う「総合格闘技」のようだ。
脚本が無く何が起こるか予想がつかない、だから監督ですらありのままを受けとめるだけではないだろうか。
前半は山本医師の素晴らしい精神科医としての姿が表現されている。
「病気ではなくて人を看る」
「本人の話に耳を傾ける」
「人薬(ひとぐすり)」
それらのモットーを表している小道具があった。
山本医師は事務用の「係長席」のような椅子に座られているが、患者はまるで「部長席」のようなどっしりと座れそうな椅子なのだ。決してパイプ椅子ではない。山本医師がワンダウン下がったポジションで、患者の話を傾聴していることが分かる。引退するには惜し過ぎるとやりとりから十二分に伝わってくる。
そして後半に入ると奥様が映り込んでくる。前作「精神」を観た人なら尚更感じるだろう違和感。山本医師を支え続けた姿から、先に「人生を降り始めた姿」が映される。そしてその妻を支えることに残りの人生を使うことを選んだ山本医師の覚悟がテーマの一つであることに気づくまでそう時間はかからない。
素晴らしい医師から一人の夫になる。
働く男ならあり得る姿だと、頭の片隅に入れておきたい。
そしてその時に山本昌知氏のように振る舞う備えはシェおきたいと思う。
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