クリストファー・ノーランが新作サポート ロッテルダム映画祭でクエイ兄弟展覧会
2020年2月3日 19:00

[映画.com ニュース]1月22日から開催された第49回ロッテルダム映画祭で、「ストリート・オブ・クロコダイル」などの実験的ストップモーション・アニメで知られるカルト作家、クエイ兄弟の展覧会とマスタークラスが開催された。
昨年、22分のストップモーションアニメ「The Doll's Breath」を製作していたふたりが、人前に姿を現すのは久しぶりとなった。マスタークラスのトークでは、この新作について触れ、彼らのファンであるクリストファー・ノーラン監督の、強力なサポートがあって完成したことを明かした。
ティモシー・クエイ「長い話になるけれど、発端は僕らのこれまでの作品を配給してきたニューヨークのZeitgeistという会社が、ブルーレイを出そうとしたものの、資金がなかったということがあって。クリストファー・ノーランの初長編の『フォロウィング』も同じ会社だったから、ノーランは彼らのことをよく知っていたんだ。それで彼が資金を出して、僕らの作品をすべて新しいプリントにしてくれた。それをいろいろなところで上映することになったのを機に、ニューヨークで彼と会った。僕らは図々しくも、今回の展覧会で発表している“サナトリウム・プロジェクト”のことで、彼の助けを借りられないかと尋ねたんだ。すでにデジタルで撮り始めていたんだけど、彼は『僕のデジタルに対する微妙な気持ちは知っているだろう。だから君たちには、新しいプロジェクトを35ミリで作ることをオファーしたい。30分以内の短編であれば大丈夫だ』と。それで彼が新作に関わることになったんだ。素晴らしいプロデューサーだろう(笑)。僕らはシナリオを用意して彼に見せたんだけど、彼は『話は理解できないけれど、君たちのビジュアルは理解できるから、信頼する』と言ってくれた(笑)」
こうしてノーランは、本作のエグゼクティブプロデューサーを買って出て、まったく自由に彼らに制作させたのだという。ウルグアイの作家、フェリスベルト・エルナンデスの小説からインスパイアされた本作は、嫉妬、裏切り、殺人をテーマに、ショーウインドーのデコレーターである主人公が、等身大の人形にオブセッションを抱き、運命に引きずられるさまを描く。不穏で悪夢的な雰囲気や、暗く屈折したテーマは彼らならでは。
司会者にフェティッシュなオブジェのことを尋ねられると、ティモシー・クエイは、「たとえばマーティン・スコセッシが20回もロバート・デ・ニーロと仕事をしたからといって責められないだろう(笑)。それと同じだ。でもつねに同じようなことをリピートしないようにはしているつもりだ。毎回異なる文脈で、異なることに挑戦したい」と語った。

また展覧会では、ブルーノ・シュルツの原作「砂時計サナトリウム」を下敷きに、彼らが長編として長年準備している素材から構成した、オブジェと映像のインスタレーションを発表した。とくに真っ暗な空間で、顕微鏡を覗くように鑑賞者たちひとりひとりがグラスを覗きこみストップモーションを観る体験は、ちょっとした覗き趣味にも似た怪しい気分にさせられる。世界の監督たちを刺激し続ける屈指の奇才、健在を確認させられた。(佐藤久理子)
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