「Daughters」クランクアップ! 三吉彩花&阿部純子が構築した唯一無二の関係性とは
2019年10月28日 09:00
[映画.com ニュース] 女優の三吉彩花と阿部純子が共演する映画「Daughters(ドーターズ)」が10月28日、クランクアップを迎えた。さかのぼること10月23日、映画.comは都内で行われた撮影に密着。約1年という撮影期間を通じて、絆を深めた三吉と阿部の言葉から浮かび上がるのは、互いが“唯一無二の共演者”だったという事実だ。
東京・中目黒でルームシェア生活を送る小春(三吉)と彩乃(阿部)を主人公にしたヒューマンドラマ。「妊娠」「シングルマザー」という人生の決断を経て、友情、仕事、家族と向き合いながら、過去への固執と現実、そして“その先”を描き出す。
ファッションイベント演出家、映像作家として活動してきた津田肇監督が、本作の脚本を執筆し始めたのは、約5年前のこと。「長い間、友人とルームシェアをしていて、それを終えた後、すぐに結婚し、子どもができて。そこで生活にも心境にも色々と“変化”があって、これは面白いんじゃないか」と私生活から着想を得たようだ。女性2人がルームシェアを始め、やがて、その一方が妊娠してしまったとしたら――。「いつか映画を撮りたい」という思いを胸に、津田監督の頭の中で物語は育まれていった。
津田監督とはファッション関連の仕事で知り合っていた三吉は、「自分がやってみたい企画に、近いなと感じていたんです。思い浮かべたのは、外国の作品でよく描かれることがある、女性同士のルームシェア、そして恋愛。役柄や世界観、絶妙な空気感の違い――想像が膨らむ台本だったんです」と念願の作品になった様子。一方、阿部は「ファッション性が高く、彩色豊かな世界観は、私にとって未踏だった領域でもありました。最初は不安になったこともあるんですが、いざ参加してみると和気あいあいとしていて、楽しい現場になりました」と笑顔を見せてくれた。
撮影の光景を眺めていると、2人が抱く“居心地の良さ”というものを感じ取れる。10月23日に行われたのは、小春と彩乃がともに暮らし始める部屋へ引っ越してくるという回想シーン。現場に足を踏み入れると、まず目についたのは、仲睦まじい様子でソファーに座り言葉を交わす三吉と阿部の姿。しばらくすると、各所から笑い声が上がっていく。それも“何度も”だ。
「若いスタッフの方々が多くて、そういう方達と映画を作りたかったんです。撮影もパワフル、チームワークも抜群。より一層“映画を共に作らせて頂いている”という感覚が芽生えています」(三吉)。「カメラワーク、すごく良かった。100点!」「じゃあ、次は120点目指します!」という賑やかな掛け合い、撮影がスムーズに進めば「衣装を変えたバージョンでやってみます?(笑)」と冗談が飛ぶ。津田監督は“笑顔が絶えない場”を創出しつつも「これはこれでOK。でも、もう1回!」とベストショットの探求に余念がない。それぞれがポジションの垣根を越えて、ひたすら“映画作り”を楽しんでいるようだった。
本作の成功の可否は、三吉と阿部が、劇中さながらの絆を築き上げることができるかという点にかかっていたように思える。クランクイン前、小春と彩乃が暮らす部屋を訪れ、何気ない会話を交わしながら「一緒に生活をする際の空気感」を肌身で感じていった。2人が導き出した答えは「彩乃が純ちゃんで良かったという思いが、日を追うごとに強くなっていったんです」(三吉)、「私も同じ!」(阿部)というものだ。
三吉「ひとりの役者さんと、一対一でこんなに向き合う機会が、今までなかったんです。カメラが回っている時だけでなく、素の部分も見えてくる。純ちゃんは壊れてしまうんじゃないかって思うほど繊細なんですけど、その一方で芯の強さもある――ふとした瞬間に魅せてくれる、ゾワゾワする女優さんなんです。私が今まで出会ったことのないタイプだったからこそ、スクリーンを通じて映し出される私自身も“見たことのない三吉彩花”になっている気がしています。新しい自分を引き出してもらっている感覚でした」
阿部「私も三吉ちゃんのおかげで、『頑張ろう』という気持ちが想像以上に引き出されました。台本で悩んだ時も『私はこう思う』とアドバイスをしてくれますし、安心感があるんです。プライベートでは、服や美容に関しても相談に乗ってくれて――(自身が年上だけど)お姉ちゃんみたいな感じ(笑)。その関係性も役とリンクしています。この作品だからこそ、2人の空気感が生かせていると思います」
約1年間の撮影を通じて、丹念に構築されていった10カ月間のストーリー。「日本の四季はもちろんのこと、最近はオリンピックだったり、新元号っていうことがあって、日本や東京の街が少しずつ変わっていくことを体感した人も多いはず。それが2人の時間と重なり合っていけばいいなってことも考えました」という津田監督は“変化”という要素をキーにしつつ、小春と彩乃の過去(=回想)も劇中の各所に盛り込んでいる。「回想シーンは映像として印象に残るものを大胆に。、(1年を通じた)ドラマパートではなるべくスタンダード、かつ丁寧に」という手法で“若さというものは、その時にしかない”という点を表現しようとしている。今年の3月末頃からスタートした小春と彩乃としての日常――三吉と阿部は、今だからこそ発見した気づきを告白してくれた。
三吉「秋冬編に臨む前、春夏編での感覚を取り戻すために、改めて映像を見せてもらったんです。秋冬編では、彩乃の身体にも変化が現れ、小春も『どう支えていくのか?』と考え続ける“時間の経過”があったので、2人とも(春夏編とは)顔つきが微妙に違うんです。春の桜の映像を見たとき、ちょっと幼さすら感じました(笑)。秋以降は段々と、純ちゃんが母親に見えてくる。子どもを守らなくてはいけないという意志の強さが、セリフの圧や重さで感じるんです。そうすると、自然と自分も同じ線に乗って、芝居ができました」
阿部「経験したことがない妊娠を表現する――ものすごく想像力を働かせないといけないことでした。色々な方にお話を聞いたり、監督と話し合ったりしましたし、お腹が大きくなっていくという過程を慎重に撮っていただいています。こだわり抜かれた背景や装飾、そういうスタッフの皆さんの力でも補っていただけましたし、春夏編と秋冬編が重なり合って、物語がより立体的になったんじゃないかなと思っています」
阿部の言葉通り、登場人物に匹敵する程の存在として挙げられるのは、小春と彩乃がいる空間や身にまとう衣装だ。「津田監督の映像は、登場人物の内面を、床、壁、照明、服、そういったもの全てで“見せてくれる”んです。(芝居をする際に)身を委ねられるものがあったのは、とても助かりました」と振り返る阿部。「(劇中には)絶対に取り戻せない一瞬一瞬の輝きみたいなものが、たくさん詰め込んであります。何気ない日常の中、それが零れ落ちていく。ちょっと思い出してみると、泣きそうになってしまう。そういうものが込められているんです」と語っていた。そして「どんな方でも、色々な解釈、受け取り方ができる物語」とアピールした三吉は、阿部の意見に同調しつつ、本作が秘めた“ある可能性”に思いを馳せた。
三吉「朝、目が覚めると、何気なくテレビで『エターナル・サンシャイン』を流しているんです。つまり、毎朝のBGMみたいになっていて。『Daughters(ドーターズ)』は、そういう存在になれるんじゃないかな。1度鑑賞して、ずっしりと何かを考えさせられるというよりも、もっとソフトで自由な存在。『自分だったらこう思うな』と感じたり、友人や家族、恋人についてのことを考えたり――見る時期やモチベーションによって、とらえかたが変わってくる。何色にでも染まることができて、見た人にそっと寄り添える作品になっていくと確信しています」
「Daughters(ドーターズ)」は、2020年夏に全国公開。
フォトギャラリー
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
【推しの子】 The Final Act NEW
【忖度なし本音レビュー】原作ガチファン&原作未見が観たら…想像以上の“観るべき良作”だった――!
提供:東映
物語が超・面白い! NEW
大物マフィアが左遷され、独自に犯罪組織を設立…どうなる!? 年末年始にオススメ“大絶品”
提供:Paramount+
外道の歌 NEW
強姦、児童虐待殺人、一家洗脳殺人…地上波では絶対に流せない“狂刺激作”【鑑賞は自己責任で】
提供:DMM TV
全「ロード・オブ・ザ・リング」ファン必見の超重要作 NEW
【伝説的一作】ファン大歓喜、大興奮、大満足――あれもこれも登場し、感動すら覚える極上体験
提供:ワーナー・ブラザース映画
ライオン・キング ムファサ
【全世界史上最高ヒット“エンタメの王”】この“超実写”は何がすごい? 魂揺さぶる究極映画体験!
提供:ディズニー
ハンパない中毒性の刺激作
【人生の楽しみが一個、増えた】ほかでは絶対に味わえない“尖った映画”…期間限定で公開中
提供:ローソンエンタテインメント
【衝撃】映画を500円で観る“裏ワザ”
【知って得する】「2000円は高い」というあなただけに…“超安くなる裏ワザ”こっそり教えます
提供:KDDI
モアナと伝説の海2
【モアナが歴代No.1の人が観てきた】神曲揃いで超刺さった!!超オススメだからぜひ、ぜひ観て!!
提供:ディズニー
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。