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芦田愛菜、「海獣の子供」で等身大の14歳を表現 自分の声を探りながら琉花をつくりあげていく

2019年6月6日 21:00

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取材に応じた芦田愛菜
取材に応じた芦田愛菜

[映画.com ニュース] 「鉄コン筋クリート」のSTUDIO4℃が、五十嵐大介氏の漫画を劇場アニメ化した「海獣の子供」が6月7日から公開される。夏休みに部活で居場所をなくした14歳の少女・安海琉花が、ジュゴンに育てられたという不思議な少年・海(CV:石橋陽彩)と出会い、生命の秘密に触れていく海洋冒険物語。芦田愛菜は同い年の琉花を演じるにあたり、どんなことを考えたのだろうか。

――原作を読んで、どのように思われましたか。

芦田:絵がとてもきれいで繊細で、雰囲気が好きだなあと思いました。白黒で描かれた世界なのに、海の中のシーンなどは読んでいて自分も海中にいるような気持ちになる不思議な感覚で。水の描き方がとてもダイナミックで、躍動感のある描写が印象に残りました。

――ご自身と同じ年齢の琉花を演じるにあたって、どんなことを考えられましたか。

芦田:そうですね……。(少し考えて)やっぱり、琉花も私も同じ14歳なので、彼女が分からないと思ったことや、どうすればいいのかと迷ったり悩んだりした場面に直面したときには私も同じように感じたことが多かったです。琉花の心情やシーンの意味についていろいろ悩みましたが、同い年だからこそ感じられる部分があるのかなと。彼女に寄り添いながら、リアルな等身大の14歳として演じさせていただきました。

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――アフレコは、どのように進めていったのでしょうか。

芦田:収録は2日間で、最初から順番に録っていきました。アフレコ時の映像は完成形に近いものを見ることができたので、イメージしやすかったです。収録のブース内には渡辺(歩)監督が一緒にいてくださり、マンツーマンで作品に関する話ができて、すごくやりやすかったです。渡辺監督が私に琉花をやってもらいたかったと言ってくださっていたことも聞けてうれしかったです。

――渡辺監督と、他にどんな話をされたのでしょう。

芦田:各シーンの琉花の気持ちや、監督の作品に対する思いなどもうかがうことができました。「このセリフは、もっとこうしたほうがいいですか」と質問すると、「たしかにそのほうがいいですね」とか「いや、ここはこれでいいんですよ」と監督は的確に教えてくださって、とても演じやすかったです。そうしたコミュニケーションのなかで、琉花というキャラクターが自分のなかでかたちになっていったように思います。

――原作者の五十嵐大介さんも、アフレコ現場にいらしたそうですね。

芦田:そうですね。海と一緒にいる空にある変化がおこるシーンで、漫画では「ギャッ」と大きく琉花のセリフが書かれているのですが(※原作単行本2巻311ページ)、映像ではどんな音がふさわしいのだろうという話になったことがありました。そのときは、五十嵐先生にどのような音のイメージでこのコマを描いたのかをうかがいながら、監督と3人で琉花の声を一緒に決めたことがありました。

――専業の声優でない方の声の魅力のひとつに、ナチュラルさがあると思います。琉花の声はナチュラルでありつつも、驚いたリアクションのところなどでは、“アニメ声”に似た艶っぽさもあったのがすごいなと思いました。そうしたところは意識されていたのでしょうか。

芦田:アニメならではの声の表現をしようと心がけてましたが、今言っていただいたような点は特別に意識していませんでした。琉花は「言葉にして言う」ことが上手くできず、自分でもそれをもどかしく思っている子ですが、心のなかではたくさんしゃべっているんですよね。そうした思いが言葉として表にあふれているときには、心のなかの声よりも息遣いを少し多くしていたところはあったと思います。

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――普段お仕事されている実写や舞台と、本作のような声の出演で、演じるうえでの意識の違いはあるのでしょうか。

芦田:舞台は、生のお客さんの声を感じられるのが映像のお芝居と違います。生のリアクションや拍手などを感じられるのがうれしいですし、お客さんの声にあわせてアドリブを入れるときも、毎回同じことをするのではなく、ちょっとずつアレンジを加えたりするのもすごく楽しいです。普段のお芝居だと、ちょっとした目線の動きや動作、表情などで表現できることがたくさんありますが、アニメーションではキャラクターの表情にあわせて声だけでの表現が必要になるので、収録は自分の声を探りながらキャラクターをつくりあげていく過程に参加できている感覚があります。それはすごく難しいことなのですが、やりがいのある面白い部分だと思っています。

――個人的にお好きなアニメ作品があったら教えてください。

芦田:「千と千尋の神隠し」(2001)のような、アニメならではの独特な世界が描かれているものが好きです。映像のお芝居ではできないようなことが絵で表現されていて、見ることでそれを体験できるのが魅力だと思っています。「海獣の子供」もそうですが、絵そのものがキラキラしていて、自然の表現が美しく描かれ、ひとつひとつが命をもっているような感じがしました。そうした表現ができるのがアニメの魅力のひとつなんだと、あらためて感じました。

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――本作は、全編緻密に描かれたアニメーションが魅力です。芦田さんが特に心に残ったところがあったら聞かせてください。

芦田:序盤、琉花が水槽のなかにいる海君に最初に会うところが、とても気にいっています。水槽の水や魚がとてもきれいに描かれていて、音楽も盛り上がり、海君という不思議な存在に出会った感じがでていて。琉花が、自分では気がついていないけれど高揚していることが伝わってくるシーンだと思います。あと、やっぱりラストの20~30分は本当に圧巻です。私自身、演じながらいろいろなことを感じたり考えたりしましたが、明確な答えや正解がでるものではないとも思っています。私をふくめて見た方がそれぞれ違うことを感じたり思ったりして、そのときに感じたことを大切にしてもらえたらいいなと、完成した作品を見て思いました。海って身近なものなのに、深海のことなど、まだまだ知らないことがたくさんあります。もしかしたら海の中で「海獣の子供」で描かれているようなことがおきているかもしれない――そんなことを想像したりして、さらに海への興味が深まりました。

――琉花の家族をめぐるドラマについては、どう感じられましたか。

芦田:琉花の家族は、お父さんもお母さんも思っていることはたくさんあるのに、それを上手く言葉にできないがゆえに、気持ちがずれていった部分があるのかなと思いました。夫婦や恋人、友達といった強く気持ちが通じ合えていると思えている間柄でも、相手がどう思っているかをすべて見通すことはできないですよね。思いを言葉にして伝えていくことの大切さを感じました。
それとは別に、あえて言葉にはしないで“感じる”ことも大切だったりしますよね。琉花たちにおこった出来事には、言葉にすることの大事さと、言葉にせずに感じることしかできない不思議さの両方が描かれているように思いました。

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