河瀬直美監督、辻村深月「朝が来る」を映画化!
2019年5月30日 07:00

[映画.com ニュース] 日本を代表する映画監督・河瀬直美が、辻村深月氏の長編小説「朝が来る」を映画化することが明らかになった。既に4月16日にクランクインしており、都内、栃木、奈良、広島、似島、横浜と全国5カ所での撮影を敢行中。配給のキノフィルムズによれば、6月上旬のクランクアップを予定している。
故樹木希林さんが主演し第68回カンヌ国際映画祭・ある視点部門のオープニング作品として上映された「あん」、永瀬正敏を主演に据え第70回同映画祭のコンペティション部門に選出されエキュメニカル審査員賞を受賞した「光」など、精力的に新作を発表し続ける河瀬監督が新作に選んだのは、出産をめぐる女性たちの葛藤に迫る社会派ミステリードラマだ。自分たちの子どもを授かることが叶わず特別養子縁組という手段を選んだ夫婦、中学生で妊娠し断腸の思いで子どもを手放すことになった幼い母……。それぞれの人生を丹念に描く今作の映画化に際して、河瀬監督は高橋泉とともに共同で脚本を執筆した。

河瀬監督は「撮影中、涙する場面に遭遇する時がある。それは、俳優たちがその日常を生きて、脚本からもはみ出る感情を発露させた瞬間。こういった現場は自分にとっても稀だと実感している。とにかく俳優が素晴らしい。生きているのだ。息づいているのだ」と手応えのほどを明かしている。原作に関しても、「『朝が来る』をこの世界に誕生させた辻村深月の才能に嫉妬する。その物語を映画化できる喜びに打ち震えている。小説の中で、ふたりの母をつなぐ子ども『朝斗』のまなざしが表現されている部分を読んだとき、ああ、この世界を映像化できれば素晴らしいなと感じた。その『まなざし』が見る未来を美しく描くことができればと願っている。誰しもが誰かの『子』であり、『母』から生まれてきた事実を思えば、この物語の根幹で心揺さぶられる感情があるだろう。そこには、この世界を美しいと思える、無垢な魂が見た、世界の始まりがある」とコメントを寄せた。

一方、原作者の辻村氏は、河瀬監督と初めて対峙した日、挨拶よりも先に「この映画を撮るにあたって、朝斗のまなざしというものは必要不可欠だと思っています」と言われたという。「原作『朝が来る』はよく、産みの母親と育ての母親、『ふたりの母の物語』だと言われてきた。しかし、河瀬監督はそこに、幼い『朝斗』のまなざしなくしては成立しない世界をはっきり見ておられた。その瞬間、震えるような感謝とともに、この人に朝斗とふたりの母親を、『朝が来る』の世界を託したい、と強く思った」と胸中を告白。脚本を読んでさらにその思いは強くなったようで、「ラスト、『原作でもこうすればよかった』と思える構成がある。けれど私が小説で書いてもきっとその光景には届かなかった。映画だからこそ監督が彼らをここに送り届けてくれたのだということが、はっきりわかる。映画『朝が来る』。私が見たもの、河瀬監督がその先に見たもの、幼い子ども『朝斗』が見た世界を、できることなら、あなたにもぜひ見てほしい」と語っている。
なお、キャストは後日発表されるという。2020年に全国で公開。
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