「HOMIE KEI」公開 元ヤクザと元刑事がかつての歌舞伎町の裏側語る
2019年4月27日 21:30

[映画.com ニュース]日本人でありながらメキシコのギャングの世界に足を踏み入れるなど、壮絶な半生を送ったKEI氏を追ったドキュメンタリー映画「HOMIE KEI チカーノになった日本人」がヒューマントラストシネマ渋谷で初日を迎え、「元ヤクザ」のKEI氏と、「歌舞伎町を担当していた元刑事」の北芝健という裏社会を熟知する二人が、サカマキマサ監督とともに登壇。1992年に暴力団対策法が施行される以前の日本で実際にあった裏社会の現状を赤裸々に語った。
青年期にヤクザの世界に足を踏み入れ大成功を収めるも、ハワイでFBIのおとり捜査にハメられ、アメリカの極悪な刑務所に10年以上服役。いつ殺されてもおかしくない状況の中、己の力と精神力で闘い、生き残ったKEI氏は、やがてチカーノと呼ばれる刑務所最強のギャンググループと心を通じ合わせるようになる……。そんなKEI氏に長期にわたる取材を行った本作は、過去の壮絶な体験から、問題を抱える子どもたちの支援活動を行っている現在の姿まで、KEI氏の様々な姿を描き出している。
観客の前に立ったKEI氏は「この映画に関わってから10年くらいたちましたけど、その間にヒゲが白くなってしまって。自分の子どもも幼稚園から中学生になった」としみじみ。そんな言葉に北芝氏は「長い間で変わったと言うけど、KEIさんは変わっていない。その代わり貫禄がついたというか、実業家みたいになって。驚くやら感心するやら」と笑ってみせた。
KEI氏と北芝氏は、ヤクザと刑事という風に、その立場は違ったものの、同時代の新宿・歌舞伎町を知る者同士。「当時と今とでは(歌舞伎町も)まったく異質の世界になっていますね」と北芝氏が語ると、KEI氏も「その当時は警察の人とも持ちつ持たれつで。今とは時代が違う」と力説する。特に警察にとって、拳銃の押収は非常に評価が高かったとのことで、警察官のノルマ達成のために、ヤクザがコインロッカーに拳銃をわざと隠してあげて、それを警察に押収させるといった“持ちつ持たれつ”が平然と行われていたという。
さらに衝撃的な話は続く。12歳か13歳の頃に血液検査をした際に、男性ホルモン値が通常よりも4倍ほど高いと診断された北芝氏は、医者から「この子は普通に育てない方がいい。異常な数値だから」と言われ、海外で軍人に志願するか、暴力団に入るか、警察に入るかということを本気で考えたという。「結局、軍人とヤクザと警察というのは同じ人種なんですよ。修練の時代に、殴られ、蹴られ、つばを吐かれ。人間性を否定されないとやっていけないんですから。警察学校に行った時もそうでしたよ」と笑う北芝氏。「でも暴対法ができてからはガラッと変わった。今じゃ逆にヤクザのなり手がいない。むしろ高齢者ばかり」と時代の移り変わりを感じているようだ。
その後もアメリカと日本の刑務所の違い、覚醒剤から更生することの難しさなど、裏社会を知るふたりならではの話に、観客も驚きを隠せない様子。そんなKEI氏の人生を追ったサカマキ監督は「KEIさんはかなり違った方向性に人生を生きた方なので。この映画でKEIさんの生き方を感じていただいて。少しでも自分と似たところを感じていただければ、皆さんも長生きできるんじゃないかと思います」と観客にメッセージを送った。
(C)映画「HOMIE KEI チカーノになった日本人」製作委員会
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