ブラックホールに向かう宇宙船で生殖実験「ハイ・ライフ」クレール・ドゥニ監督に聞く
2019年4月18日 14:00
[映画.com ニュース] クレール・ドゥニ監督が、ロバート・パティンソンを主演に迎えた最新作「ハイ・ライフ」が4月19日公開する。地球で死刑宣告された囚人たちが、ブラックホールに向かう宇宙船内で人工的な生殖を試みる科学者の実験台になるという物語。プレミア上映されたトロント映画祭2018GALAS部門では、その衝撃的な内容に、大絶賛とブーイングが同時に巻き起こったという。このほどプロモーションで来日したドゥニ監督に話を聞いた。
「脚本を書いているときから、女性ということしか考えていませんでした。ギリシャ神話の王女メディアのようなもので、他の女に心を奪われた夫に対する嫉妬心から、自分の子供を殺してしまう。それが悲劇の始まりです。それで、宇宙船内で子供を作ることを自分の宿命にするという設定になったのです」
「私がこの映画で描きたかったのは、宇宙で一人ぼっちで、女の子の赤ちゃんといる男性の話。ディブスの話は、この赤ちゃんが生まれる以前の話です。モンテは、純潔を保とうとしているので科学者を惹きつけるのです。最終的にモンテは娘とふたりきりで一生を過ごすことになる。そして、絶対的なタブーに接近するのです」
「そもそも彼らは囚人です、監獄でセックスはできません。もちろん、マスターベーションや隠れた形での性行為はあると思いますが。自由のない監獄で、肉体的な愛をどうするのか。果たして肉体的な行為はそれほど必要なのか? その私の答えとして、快楽ボックスを用意したのです。古代ギリシャのテキストを読んでいると、両性具有の存在が出てきます。宇宙船にもひとりくらい、そういったキャラクターを入れてもよかったのかもしれませんね」
「シナリオを書くときにまず必要でしたので、宇宙船の内部構造は私が設定をしました。廊下、男性、女性の寝室をおきます。それから、ドクターの診察室と死体置き場。下部には外へ出るためのエアロックがあり、快楽ボックスと庭、あとは船外機というとてもシンプルなもの。これらを美術担当と相談しながら作っていきました。この映画には特殊効果を使った典型的なSF映画の装置は一切ないのです。最後に出てくるブラックホールは、アーティストのオラファー・エリアソンに、光の協力をしてもらいました。ゴールドがかった、黄色い光です」
「長年映画作家であり続けられた私のエネルギー源は、ほか分野で何も役に立たない人間だということ。いわゆるやくたたずで、映画を作ることしかできなかったのです。医者になりたいなどと思ったことはなく、夢見がちな人間だったので、映画だけが唯一自分が生きられる場所だったのです。おそらく、私以外にも、多くの映画作家が正常な仕事への適応力がない人たちなのではないでしょうか。映画だけが、居心地のいい場所であること。それが、私のエネルギーの源になっています。ただ、女性監督であるということで難しい点はありました。私が映画を作り始めたとき、作品に関わる全ての人に対して、何も恐れるものはない、私が何もかも知っていると信用してもらうことは大変でした」
「ハイ・ライフ」は、4月19日からヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開。
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