アモス・ギタイ監督、路面電車内で撮影した新作は「エルサレムを象徴している」
2018年11月24日 14:00
[映画.com ニュース]第19回東京フィルメックスで、アモス・ギタイ監督の「エルサレムの路面電車」「ガザの友人への手紙」が11月23日上映され、ギタイ監督がティーチインを行った。
「エルサレムの路面電車」様々な宗教をバックグラウンドに持つ人々がモザイク状に混在して居住するエルサレムを東西に走る路面電車を舞台に、オムニバス風に幾つか乗客ののエピソードをつづる作品。「ガザの友人への手紙」はイスラエルによるガザ封鎖の過激化を受けて発表されたドキュメンタリー。イスラエル、パレスチナの俳優たちとギタイ本人がパレスチナ問題をめぐる様々なテキストを朗読する。
「エルサレムの路面電車」について「皆さんご存知のとおり、現在のイスラエルの状況はかなり緊張しておりますが、それでもこの映画に出てもらいたいと選んだ俳優たち、イスラエル人もパレスチナ人も、そしてマチュー・アマルリックのような海外から来た俳優も揃って引き受けてくれ幸福でした。撮影現場はある種の対話の現場になったと思います」と振り返る。
そして、「車内ですべて撮影しています。狭い中での撮影は簡単なことではありません。その一方で、あちこちから来た人たちがたまたま乗り合わせる路面電車はメタファーで、エルサレムを象徴しています。また、ある種楽観的な将来像を描こうとしていると言えいます。イスラエルとパレスチナの間に小さな衝突は起こり続けるにしても、何らかの共存の形が可能ではないか、今のように激しい憎しみや暴力がぶつかり合うのとはちがった形です」とテーマを語る。
また、客席で作品を鑑賞していたアミール・ナデリ監督から「あなたの映画を25年見続けてきて、その中でもっとも新鮮な映画だと思いました」と感想を伝えられると、「自分自身を再発明し続けることは難しい。カンヌやベネチアのレッドカーペットにほれ込んでしまうようなことのないように、タキシードではなくTシャツを着なおして、仕事に行くことが大事です」と答え、この作品で、普段一緒にならない人同士を隣に座らせることができました。宗教的に違う男女や異なった文化背景を持った人々が集まるり、その対話の中から作品が生まれてくるのは私たちアーティストにとってとてもうれしいこと」と結んだ。
第19回東京フィルメックスは、11月25日まで東京・有楽町朝日ホールほかで開催。