シャンソン界の女王演じたジャンヌ・バリバール、孤高の歌姫、バルバラを語る
2018年11月16日 14:00
[映画.com ニュース] 仏俳優マチュー・アマルリックが監督・脚本・出演を務め、伝説的シャンソン歌手バルバラの知られざる人生を描いた映画「バルバラ セーヌの黒いバラ」が公開された。主演は、女優、歌手として活躍し、かつてのアマルリックの元パートナーであるジャンヌ・バリバール。孤高の歌姫を演じたバリバールが来日し、撮影を振り返った。
「当初から古典的な伝記映画は作らないようにしようと、マチューと話していました。私たちがやりたかったことは、バルバラを知らない人でもバルバラを好きになってほしいという思いです。かつて、ミロス・フォアマン監督は『マン・オン・ザ・ムーン』で、アメリカのコメディアン、アンディ・カフマンを描きました。我々は当初、カフマンという人物についての知識は全くなかったのですが、でもフォアマンは彼の人となりのわかる素晴らしい映画を作っています。ですから、同じことをやろうと思ったのです」
「女優という仕事をするには、自分が演じる人物に圧倒されないこと。それが基本です。また、年齢や経験を重ねるごとにプレッシャーは感じなくなるものです。偉大な人物だと思うより、私の従姉妹なの、と思いながら演じます。それくらいの心持ちでないと、演技はできませんね」
「もちろん、彼女の楽曲、神話としての存在は知っていて、彼女と自分の感性は似ているのではないかと思っていました。しかし、今回この作品を通して、女性として彼女が歩んできた人生と私の人生は全く違うと思いました。女であること、友人、仕事、男性関係…一番大きな違いは、彼女には子どもがいませんでしたが、私にはふたりいます。その違いは、女性の人生において重要です。私とかけ離れている人物だからこそ、演技のしがいがあるのです」
「全然友達になれそうにないです(笑)。アーティストとして知るだけで十分です。もし、気が合う部分があるとすれば、政治的な部分ですね。彼女は不平等なや不公平なことに対して政治的にコミットメントしていたのですが、それを自分の宣伝として使うことは全くなかったのです。どちらかというと、控えめに、知られないようにやっていたのです。例えば、女性刑務所で歌ったり、専用の電話回線をひいて、エイズ患者たちの話を聞くなどの活動をしていました。もし、彼女に会って質問をするとしたら、『この現代社会をどう思いますか?』と聞きたいですね。女同士の会話、というより政治的な話をしたいです」
「私たちはお互いがアーティストとしてリスペクトしており、全幅の信頼があります。観客としては自尊心をくすぐられるような思いもしましたし、感謝もあります。けれど、そこに自己陶酔するのではなく、軽く流すことが大事だと思います。お互いに信頼関係があるので、一緒に仕事をするのが心地よいんです。映画は、高尚な概念の芸術ではありません。もっと、ピクニックの準備をするような、具体的な日常的な作業です。観客は映画のマジックで素晴らしいものが見られるけれど、作っている時はとても小さなことばかり。映画の仕事をするということは、それを好きになれるかどうかということなのです」
「それは日常の中にたくさんあります。気をつけようと努力していることは、自分の周りにいる人たち、子どもたちや、恋人、両親、友人にちゃんと向き合うことです。本当の意味での気遣いをしようと思うと、かなりの努力が必要なのです。アーティストだからということを特権的に考えて、他の事を投げやりにすることはできませんね。また、悲しみに打ちのめされて、そこに埋没することはしないようにしています。それは私にとって、簡単なことではありませんが」
「地理学者になりたかったです。私たちが生きている環境や街のために、どんな開発をしたらいいのかなどを考えたいです。私は人々の暮らしが美しいと思うのです。もちろん、人間の暮らしだけでなくて、風景そのものも暮らしだと思うのです。私は旅が大好きなのですが、地球の環境も考えないといけませんね。人間が旅をすること自体が地球にとって良いことなのかとも考えています」
「バルバラ セーヌの黒いバラ」は、11月16日から東京・渋谷のBunkamuraル・シネマほか全国で公開。
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