レイフ・ファインズ監督、撮影秘話を披露「モナリザを独占できた」
2018年10月28日 14:45
[映画.com ニュース] 第31回東京国際映画祭コンペティション部門出品作「ホワイト・クロウ(原題)」が10月27日、東京・六本木のEXシアターでアジアンプレミアされ、監督、製作、出演のレイフ・ファインズがティーチインを行った。
原題は「比類なき者」という意味で、世界的に活躍したソ連のダンサー、ルドルフ・ヌレエフの伝記。極貧の幼少時代から、舞踊の才能が開花するレニングラードのバレエ学校時代、1960年代初頭のパリでの滞在、ル・ブールジェ空港で亡命するまでをスリリングに描く。ロシア文化に深い造詣を持つファインズが20年前にヌレエフの伝記を読み、映画化の構想を抱き続けていた。
満席の客席から盛大な拍手を贈られたファインズ監督は「これは有名な時代ではなく、若きヌレエフの話です。自己実現したいというダイナミックな精神に感動しました。彼は時に人を怒らせてきたことで有名ですけども、ダンサーとして完璧を目指したいと思っていました。ひとつの背景として、冷戦ということがあります。そんな中、自由になりたいと思い、実現した。人間として勇気ある行動だと思う」と語った。
主演のヌレエフ役には、タタール劇場バレエのプリンシパルで、演技は未経験のオレグ・イベンコを抜てき。「演技ができるダンサーがロシア中で大オーディションをやりました。最終的に4、5人が残ったのですが、オレグは最初からいいと思っていました。伝記的な映画のときは、本人に似ているかどうかが重要。オレグはタタール人でなく、ウクライナ人ですが、かなり似ていると思います。スクリーンにおける本能的な部分もあり、演技も素晴らしかった」と称えた。
3本目となった監督業については「まだまだ勉強している段階です。次は監督に専念したい。出演するのは大変すぎましたが、財政的な理由があって、出演しました。たくさんの方のスキルに恵まれました。私自身もプロデューサーに名を連ねていますが、ガブリエル・タナという素晴らしい女性がいたからです」。ヌレエフの教師役では流暢なロシア語を披露しているが、「流暢ではないです。ちょっとは喋ることはできますが、通訳に助けていただいて、一生懸命練習し、後はポストプロダクションで修正しました」と笑って謙遜した。
観客からは「印象に残っている国は?」という質問も。「ロシア文化に愛情を持っています。サンクトペテルブルクが印象深い。建築、美術館が素晴らしい。ここでたくさんのシーンが撮れたことはエモーショナルな意味があります。セルビアでも撮りましたが、映画に友好的な国でもあったから。一番高まったのは、バレエ学校に入る道で素朴な木の扉を開けるシーンでした。ヌレエフがレンブラントの絵画『放蕩息子』を見上げるシーンも大事なシーン。エルミタージュ美術館で撮らせてもらいました。美術館には長編映画では使わせていないというポリシーがありましたが、館長を説得できました。また、ルーブル美術館でも閉館している時にジェリコーの絵画を見上げているシーンを撮れました。すぐ近くにはモナリザの絵もあって、私たちだけでじっくり堪能できたのも印象的でした」とうれしそうに語った。
出演作は数多く決まっているが、監督としての次回作の構想については「何かアイデアやストーリーに心惹かれるものがあれば、撮りたいですが、まだ何もありません」と話していた。
第31回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。
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