吉田羊「ハナレイ・ベイ」で女優引退を覚悟「追い詰められ戦った作品」
2018年10月2日 21:00
[映画.com ニュース] 日本を代表する作家・村上春樹氏による短編小説を映画化する「ハナレイ・ベイ」のプレミア上映会が10月2日、東京・丸の内ピカデリーで行われ、主演の吉田羊をはじめ共演の佐野玲於(GENERATIONS from EXILE TRIB)、村上虹郎、佐藤魁、メガホンをとった松永大司監督が舞台挨拶に出席した。
村上氏が2005年に発表した短編集「東京奇譚集」に収められている一編を、ハワイロケを行い実写化。ピアノバーのオーナーでシングルマザーのサチ(吉田)は、息子のタカシ(佐野)がカウアイ島のハナレイ・ベイで、サメに右脚を食いちぎられ亡くなったことを知らされる。それから10年間、タカシの命日の時期には毎年同所を訪れ、数週間を過ごすサチ。やがて彼女は、日本人サーファーの高橋(村上)と三宅(佐藤)と出会い、「右脚のない日本人サーファーがいる」という噂を聞く。
吉田は出演経緯を「もともと村上春樹さんの作品世界が好きでした。そして松永さんの『トイレのピエタ』を拝見し、『いつか松永さんに呼ばれる俳優に』と思っていたので、二つ返事でした」と振り返ったうえで、「松永監督からは『ハワイに来る前からサチでいてください』というリクエストを受けていました。マネージャーを同行させずに1人で成田で搭乗手続きし、ハワイに行き、閉ざされた世界で過ごしていました」と説明。松永監督の演出は厳しかったそうで、「クランクイン初日からコテンパン。あるシーンでの私のサチとしての動きが納得いかず、これ見よがしに目の前でため息をつくんです。『この作品が終わったら、女優をやめよう』と思うくらい、追い詰められ戦った作品でした」と告白し、場内を驚かせた。
これに松永監督は「すみません」と恐縮しきりで頭を下げ、「自分のすべてを出さないといい作品にならないと思い、妥協をせずに挑ませてもらいました。素晴らしいキャスト・スタッフのみんなが、それに応えてくれた」と感謝をにじませる。全身全霊で演じきった吉田は、今作の初お披露目に「昨夜から心がふわふわして、心ここにあらず、という感じ。魂を捧げて演じたものですから、私の魂はまだ、映画のなかにいるのだと思います」と万感の思いを込めた。
また佐野は、吉田とのエピソードを「(撮影合間の食事で)ケチャップとマスタードを渡してくれたときは、完全に母親だった」と愉快げに明かし、村上&佐藤に目を向け「一緒に現場にいたわけではないのに、2人とは波長が合って仲良くなった。初めてのハワイ、有意義な時間でした」とニッコリ。撮影中は、ハワイが舞台の番組「テラスハウス ALOHA STATE」に出演したプロサーファー・佐藤が多くの観光客に声を掛けられたそうで、「ハワイでは魁が一番有名だった」(村上)、「吉田さんたちと一緒に歩いていると、魁だけ気づかれる」(佐野)、「日本人の女の子が吉田さんに気づかず『魁さんですよね?』と、吉田さんに聞いていた」(松永監督)と話していた。
「ハナレイ・ベイ」は、10月19日から全国公開。