“ナレーター”草刈正雄と監督が明かす「皇帝ペンギン ただいま」お気に入りシーンは?
2018年8月24日 09:30
[映画.com ニュース] 第78回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞作の続編「皇帝ペンギン ただいま」を手掛けたリュック・ジャケ監督が来日し、日本語版ナレーションを務めた俳優・草刈正雄と対面を果たした。
マイナス40度にも達するという南極の過酷な環境で暮らす皇帝ペンギンたちの姿に、草刈は「何度も感極まってしまいました」という。ジャケ監督は草刈のナレーションを「さっきスタジオに少しお邪魔した時に、草刈さんの声を聞きましたが、オリジナルのナレーションを入れたフランス人の俳優(ランベール・ウィルソン)の声にすごく似てるなと思いました。自分が監督として『欲しいな』と思う声が彼の声だったんですね。それにすごく近かったので安心しましたし、とてもうれしかったです」と評価。草刈は「ありがとうございます」と感謝を述べた。
草刈は1980年公開の「復活の日」で約1カ月間の南極ロケを体験しており、その点についても監督は「やはり現地に行った経験のある人は、画面に映し出される風や寒さとか、そういう自然の環境を見て分かっている訳で、まったく知らない人が同じ原稿を読むのと、その場所を知っている人が読むのとでは、伝わるものは違うと思うんです」と信条を語る。「その意味でも、南極を経験をされた俳優さんを選択してくださったのは、自分にとってとてもうれしいことです」。
ジャケ監督は、「前作では技術的、人的な問題があり、水中撮影がほとんどできないというフラストレーションがあり、それを解消したい思いがずっとありました。その間(12年間)に地球の温暖化が劇的に進み、深刻な状況に陥っています。COP21というパリの気候温暖化に関する国際会議と連動して南極に再び訪れて、今の状態をリアルに、会議中に資料として提供しなければならない状況がありました。南極の変化を伝えることで、地球の変化を明確に伝える。それも兼ねてできあがったのがこの映画です」と、今作を手掛けた経緯を明かす。
「この作品は父親と子どもの関係性を特に描いていますが、それを通じて、氷のサイクルと非常に密接した生活を送る皇帝ペンギンたちが、今の地球で、最も脆弱な生物であるっていう事を伝えたかったんです。南極の生態系が崩れていることが、私たちにどういう影響があるのか。今の子どもたちや、またその子どもたちに、映像を通じて伝えて意識させていくことが、自分の映画人としての重要な仕事だと思っています」という監督の言葉に草刈もうなずき、「僕がナレーションしている言葉のなかにも、そういった地球の環境についての変化であるとか、ラストにくるナレーションにもそういったテーマがちりばめられてるんですね。監督のお話を聞くと、それがとってもよく分かりますね。深く深く。込められている思いはとても深いなと感じますね」と続けた。
お気に入りのシーンを問うと「僕は特に日本人なものですから、やはり親子の別れですか。母親が去り、父親が去って……あのシーンが何といっても印象に残りますね」と草刈。監督は「ヒナが海の中に飛び込みますよね。彼らたちが見たこともない海に向かって進んでいって、海辺に着いて、さんざん迷って、最後に飛び込んで行くんですが、その彼らたちの数日を目の当たりにして、経験したことのない世界に自ら行ってしまう彼らたちの大胆さに、なんともいえない美しいものを感じました」と答えた。
「皇帝ペンギン ただいま」は、8月25日から全国順次公開。
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