象と中年男性のロードムービー「ポップ・アイ」 シンガポールの監督、タイを舞台にした理由は?
2018年8月16日 15:00
[映画.com ニュース] ひょんなことから象と共にタイ国内を巡る旅に出た中年男性の珍道中を描き、サンダンス映画祭で話題を集めたロードムービー「ポップ・アイ」が、8月18日公開する。2017年・第30回東京国際映画祭「CROSSCUT ASIA #4 ネクスト!東南アジア」でも上映された今作で長編デビューを果たした、カーステン・タン監督が作品を語った。
人生に幻滅した建築家のタナーは、ある日バンコクの街中で、幼い頃に飼っていた象のポパイと偶然の再会を果たす。タナーはポパイを故郷へ連れて帰るため、かつて一緒に育った農場を目指して旅に出る。
「私はシンガポール出身ですが、20代前半の多感な時期に2年ほどタイに住んでいて、とても魅了されました。私が生まれ育ったシンガポールは、社会が高度にシステム化されていて、人々はそれに沿って生きています。でもタイはとても自由でやりたいことは何でもやっていい、ちょっとした無秩序状態です。最初は少し違和感を覚えましたが、次第にパラダイスのように思えてきました。しかも、風景はとても美しくて、人々はとても優しくて穏やかなんです。今回、映画をつくるにあたって、そのタイの思い出が蘇ってきたのです。その中でも一番印象に残っていたのが”野良ゾウ”でした。そこから物語の発想を得ました」
「ゾウは本作のメインキャストの一人です。私たちは主人公となるゾウを探して、アユタヤ、チェンマイ、 スリンなどタイ中の様々なゾウの村を訪れました。最終的に100頭以上ものゾウに会ったと思います。そしてボンを起用することを決めました。彼は何代も続いているゾウ使いの家族に飼われていて、無秩序に広がった家の裏庭にいました。私たちクルーはみんなボンのことが大好きです。彼は外見も可愛らしいですが、それだけでなく、とても優しくて賢いのです。彼はセレモニーに登場するゾウとして活躍していました。寺の開眼式やお店の開店セレモニーなどに登場して、人々と一緒に写真を撮られたりしていたので、「待て」などの簡単な芸は習得済みでした。だから私たちが彼に教えた芸は映画に必要なものだけで済みました」
「私はこの映画で人間の存在理由やそこに流れる時間といったものを描きたいと思っていました。タイの慣習ではゾウ使いは男性しかいないということもあって男性にしました。彼の人生を表現できて、ゾウを怖がらズ一緒に撮影に挑める人を探していたのですが、難航していました。撮影開始時期が迫ってきて、小説家であり映画監督でもある 友人に誰かいないかと聞いたところ、タネートというすごく面白い経歴を持った人がいると言われました。タイでとても有名なミュージシャンだったのに突然姿を消したと。会う前にインターネットで彼のことを調べると、ミック・ジャガーのような悪そうな男の画像が出てきましたが、実際会ってみると礼儀正しくて素敵な男性でした。そのギャップに驚きつつも、彼は人生というものを理解している人だと瞬時に気づきました。オーディションでは彼はとても自然な演技をしてくれました。イメージともぴったりだったので、彼を起用しました。タネートは全力で撮影に挑んでくれました。それは良い意味でクレイジーなくらいでした。まさに真のアーティストだと思いました。この映画をきっかけに彼は俳優活動を再開しましたし、ゾウのボンは今度インド映画に出演することになりました」
「この映画では、リアル過ぎないソフトな映像にすることで、どこかマジカルな雰囲気を作りたかったので、古いアナモフィックレンズを使いました。ただ、脚本を書いているときは私の頭の中ではファンタジックな要素が強かったのですが、撮影段階では多くの人が携わって、予期していなかったリアルさも加わったので、結果として、リアリティとファンタジーのコントラストが生まれたと思います」
「シンガポールの映画業界はまだ黎明期です。エリック・クーのように成功をおさめた人は本当に数少ない状況です。以前はシンガポールで映画を作るのは大変でした。そんな中、先人たちが撮影の支援団体を作り、次第に映画制作がやりやすくなってきました。今では、国も予算をつけて、助成金や奨学金の制度を作りました」
「ポップ・アイ」は、8月18日から、ユーロスペースほか全国順次公開。
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