ポップ・アイ : 映画評論・批評

メニュー

ポップ・アイ

劇場公開日 2018年8月18日
2018年8月7日更新 2018年8月18日よりユーロスペースほかにてロードショー

旅人の脳裏をふとかすめた陽炎のような風景が、この映画には映る

日本に住んでいたらまったく誰も思いつきもしないと思う。タイを舞台にした象と旅する男の物語である。いや、タイに住んでいたとしても果たして思いつくのかどうか。監督はシンガポール人で、一時期タイに住んだことがあるという。旅人の視線と言ったらいいだろうか。仮住まいの人だからこそ思いつくことのできる物語。タイの空気や人々の生活や時間の流れに触れ、タイの人なら当たり前のこととして何も感じないことに驚き感動し、監督の中で何かが動き始める。「象だ、象と旅する男の物語を作ろう!」。バカみたいな思い付きだが、だからこそ語ることのできる物語がある。旅人の脳裏をふとかすめたかすかな影、いや、陽炎のような風景が、この映画には映る。

画像1

男は中年を過ぎ、いよいよ人生も引退の時期に差し掛かっている。妻との仲も気が付くと昔のようではない。何かをどこかで間違えてしまったのかもしれない。もしかするともっと別な人生があったのかもしれない。やり直したいのではなく、あれではなくこれを選んでしまったことの小さな寂しさが、男の胸を少しだけ重くする。そんな、もはや達成されることはない可能性のかけらが「象」となり、彼の前に姿を現したのではないか。

だからなのかこの象と旅をしなければならないと、男はやみくもに思う。説明不能なその思いに、男自身も戸惑っているように見える。もちろん観客だって戸惑う。だがそれでいいのだ。タイの空気とゆったりとした時間の流れがわたしたちをその旅に誘う。象の歩みはゆったりしているが、歩幅が大きいので案外早いのだということもわかる。ゆっくりだが早い。まさにこれこそ人生の時間そのものではないか。

樋口泰人

関連コンテンツ

関連ニュース

関連ニュース

フォトギャラリー

映画レビュー

平均評価
3.3 3.3 (全3件)
  • ゾウさん頭いい ゾウがどれほど普段大人しいかは知らないけど、撮影中よく大人しくしてるなと感心した(笑)あと呼んだら振り向くみたいなシーンもすごい。 . 1番えらいなって思ったのは主人公がちゃんと上に乗り切るまで... ...続きを読む

    せつこん せつこんさん  2018年9月20日 19:52  評価:4.0
    このレビューに共感した/0人
  • 象と過去へ遡る旅  人間の滑稽さと哀しさが全編に滲み、歌謡曲っぽい音楽が流れる。アキ・カウリスマキの映画の雰囲気に非常に似ていると思った。  配給会社の「つかみ」としては、象とおじさんの道行きという、いかにもタイ... ...続きを読む

    よしただ よしたださん  2018年9月6日 20:30  評価:2.0
    このレビューに共感した/0人
  • いろいろ背負った男と戸惑う象  タイ料理は好物でよく食べているが、タイの映画は初めてである。この映画はシンガポールとタイの合作となっているが、冒頭に中国語のロゴがたくさん出てきたので、中国資本も介在しているのかもしれない。 ... ...続きを読む

    耶馬英彦 耶馬英彦さん  2018年9月3日 08:54  評価:4.0
    このレビューに共感した/0人
  • すべての映画レビュー
  • 映画レビューを書く
このページの先頭へ

最近チェックした履歴

映画の検索履歴

他の映画を探す

映画館の検索履歴

他の映画館を探す

特別企画

新作映画評論

新作映画評論の一覧を見る
Jobnavi