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「ウエストワールド」で菊地凜子が体験した特別なシンクロと規格外のスケール

2018年7月27日 09:00

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取材に応じる菊地凜子
取材に応じる菊地凜子
撮影:小原達郎(Tatsurow Ohara)

[映画.com ニュース] 良質なドラマシリーズに定評のある米HBOが放つSF大作「ウエストワールド」。「スター・ウォーズ フォースの覚醒」のJ・J・エイブラムス、「ダークナイト」の脚本を手がけたジョナサン・ノーランが制作総指揮に名を連ね、ハリウッド映画並みの巨額の制作費を投じた話題作だ。今年放送が始まったシーズン2には日本人キャストが参戦。その1人、アカネ役を演じた菊地凛子に話を聞いた。

物語の舞台は、アメリカの西部開拓時代を模したテーマパーク“ウエストワールド”。非道徳的な行為が許されるパーク内で、人間たちは“ホスト”と呼ばれるアンドロイドたちを相手に欲望を満たし、本性をむき出しにする。シーズン2では、自我に目覚めたアンドロイドたちの反乱が始まり、その波は、日本の江戸時代を再現した「ショーグン・ワールド」にも到達する。

本作のシーズン1が好きだったという菊地は、「オーディションの話が来たときから、『ウエストワールド』の世界に入っていけるのであれば、どんな役でもやりたい」と出演を熱望。「J・Jやノーランの作品は、エンタテイメントビジネスをやっている限り誰もが携わりたいと思うので、チャンスがあったのは非常に幸せでした」と語る。ところが、アカネという役名と、あるホストの“分身”という設定しか知らされずに米国へ渡航。「何をするのかっていうのもわからずに入国しているんで、ビックリしたことのほうが多かったです」と明かす。

画像2(C)2018 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO and related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.

菊地が演じるアンドロイドのアカネは、ショーグン・ワールドにある茶屋の女将。幼い頃からわが子のように育ててきたサクラ祐真キキ)を、輿入れを強要する将軍から守ろうとするという役どころ。シーズン1のメインキャラクターで、自分たちの偽りの世界に疑問を持った最初のホストでもある娼館のマダム、メイヴ(タンディ・ニュートン)のショーグン・ワールド版だ。アカネの物語は、メイヴが作られた記憶と知りながら、愛娘を守るために自由への切符を捨ててウエストワールドへと舞い戻る途中、ショーグン・ワールドに迷い込んだことからスタートする。

シーズン1の登場人物の中でメイヴが1番好きだったという菊地は、その魅力を「強さや頭脳明晰さ、情熱、守るべきものがあるときの表情」「女性としての強い部分がものすごく出ているキャラクターで、メインの男性キャラクターにくっついている人物ではないのがユニーク」と語る。台本は自分の出演シーン以外はすべて黒塗りになっていたため、手探りで役づくりをしなければならなかったが「守るべきものに対して向かっていく力強さがブレなければ意外と進んでいけるのかなというのはあった」と吐露する。メイヴ役のタンディ・ニュートンとは、母親同士ならではの話をしたり、ニュートンの日本語のセリフを助けたり、一緒の時間を過ごすことが多く、「役の背景につながったかなと思います」と共演を振り返った。

第5話「アカネの舞」は、そのタイトル通り、菊地演じるアカネの舞がクライマックスを飾る。著名な振付師で元バレエダンサーのマーガレット・デリックが考案した、日本舞踏とコンテンポラリーダンスを融合させたような斬新で美しい舞は、「舞踊とサムライと怒り」が渾然一体となっており、「こんなにも違和感がないものなのかと思いました」。日本舞踊の経験者をもってしても、「全然違うけどいい感じ」だったそうで、「感情を殺しつつも、感情が乗ってくるような踊りのシークエンスなので、クリエイティブチームはすごいなと思いました」と謙虚に語る。

画像3

日本家屋が立ち並ぶ街並みに、ホストたちの衣装に、日本語の会話。日本の歴史風俗への忠実さを感じさせながら、あくまでもアメリカのテーマパークとして成立させるバランス感覚は絶妙だ。「西洋と東洋の文化が尊重し合うようないいポイントを見つけて、ショーグン・ワールドという独特の世界をつくることに、みんなが向かっていったような感じがしますよね」。さらに、「どれが真実だとか、これがダウトだとかいう話じゃないというか。みんながこの世界を成立させようとしていた」と、クリエイティブチームの働きぶりに敬意を払う。

そのクリエイティブチームに貢献したのが、ムサシ役で共演した真田広之だ。「アイデアをもらいにいきましたし、現場も見に来てくださいました」と感謝する菊地だけでなく、スタッフの誰もが真田を頼りにしていた様子。「あまりにも違和感があって、役者さんに集中できない部分とかを真田さんがチェックしていました。(真田が)日本チームの監督みたいな感じで現場にいてくださって、皆さん助かったって感じでした」と尊敬のまなざしだ。

ハリウッド映画をはじめ海外での映画出演の経験が豊富な菊地だが、海外のドラマシリーズは本作が初挑戦だった。脚本が完成するのも撮影の直前で、衣装やメイクもギリギリでの変更を迫られる現場で、「みんな、これは『ウエストワールド』だからっていうんですよ。この作品ではこれが常識だから慣れてねって」と圧倒された様子。タイトなスケジュールの中、全員が最高の結果を出すべく全力を尽くしていた姿に、「本当に『ウエストワールド』が好きじゃないとできない」と力を込める。ちなみにクルーたちはよく具体的な金額を口にしていたそうで、「もうドヤなんですよ(笑)。セットだけで、別の作品が撮れるくらいなんですよね」と、けた違いの制作費とスケールの大きさを肌で感じたようだ。

「もともと好きだったキャラクターとシンクロしたキャラクターを演じるのは、光栄だったのでうれしかったですね。自分の好きなキャラクターと同じ設定のキャラクターとして作品に出るって、なかなかチャンスないですから。それは『ウエストワールド』ならではでしたし、ラッキーでしたね」。ルネサンス期と言われるアメリカのドラマシリーズのなかでも、規格外のスケールで特別な存在感を示す本作で特別な体験をした菊地は、「“生きること”や“いまこの現実”というものが疑わしくなるのが、非常に面白いなと思います。それが引き続きシーズン2でも描かれているので、『ウエストワールド』の世界をあじわってもらいたいと思います」とメッセージを寄せた。

「ウエストワールド」シーズン2は、BS10スターチャンネルで8月6日から毎週月曜午後10時ほか2カ国語版が放送開始される。

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