有馬稲子が説く「小津さんに見せたかった4K東京暮色」
2018年6月24日 21:30

[映画.com ニュース] 小津安二郎監督の「東京暮色」(1957)と「彼岸花」(58)に出演した女優の有馬稲子が6月24日、小津監督の生誕115年を記念する特集上映「小津4K 巨匠が見つめた7つの家族」を上映中の東京・角川シネマ新宿でトークショーを行った。
有馬の代表作「東京暮色」は、妻に逃げられ、男手ひとつで娘を育てた銀行員(笠智衆)一家の物語。男に騙されて妊娠、中絶する次女・明子を演じた。4Kでデジタル修復された「東京暮色」の上映後に登壇した有馬は、「こんなところに出てくるべきではないですね。失敗しました。20年遅かった」と照れ笑い。「今の方は上手ですね。でも、『東京暮色』の私は悪くないと思うんですね。私、昨日、4Kで見て、“有馬さんいい”と思っちゃいました。演技していない。いや、しているんだけど、純潔さ、純粋さが出ている。だから、変な男にひっかかっちゃって、妊娠したりしちゃうんだけども」と話した。
明子役には自身の生い立ちもあって、深く共感する部分があったそう。「私は4歳の時にもらわれた子なんです。行った先のうちがよくて、踊りのお師匠さんをやっていたので、宝塚に入って、女優になったんです。だから、明子の心情がよくわかるんです。(父親役の)笠智衆さんはよかったですね。好きになる人はお父さんみたいな人。エディプス・コンプレックスなんです。そんなことがそのまま出ているんじゃないかしら」

小津監督はやさしかったそうで、「松竹に入って2、3本目でした。偉い人だったというのは知らなかったんです。その分、次の『彼岸花』ではあがってしまいました。5時近くになると、時計を見始めて、『終わろうか』というんです。大船撮影所の前にあった、佐田啓二さんの奥様の実家のお店や横浜のハンバーグがおいしいお店に連れて行ってもらいましたね。15回は食事に行ったんじゃないかしら」と話した。
登場人物に光が当てられないという小津作品も異彩を放つ「東京暮色」は公開当時、キネマ旬報19位と評価が低かったが、後年になって、再評価も高まった。有馬は「4Kでは微妙な濃淡がちゃんと出ている。(公開当時)評価が低くて、小津さんはドーンと落ちて、腐っていたんです。小津さんに見せたかった」と今なき巨匠に思いを馳せた。
3年前に喉のポリープを除去する手術をしたそうで、完治しているものの、「昨日は朗読の仕事もあって、声が出ていなくて申し訳ないです。私も、いつお星さまになるかもしれない。だから、こんな機会は最後にかもしれません」。満席で埋まった客席を見て、満足そうだった。
6月28日には、トークショーの司会を務めた映画評論家で映画監督の樋口尚文氏のインタビューを受け、映画女優としての歴史を振り返った書籍「有馬稲子 わが愛と残酷の映画史」(筑摩書房、樋口尚文共著)が発売。「巨匠、名匠についているんですよ。私の映画時代は、本当に厳しい人ばかりでした。絞られて、絞られ尽くしました。率直に、どういう青春を過ごしたのかを書きました」と話した。
「小津4K 巨匠が見つめた7つの家族」は7月7日まで公開中。7月7日からは同書の出版を記念した特集上映「女優 有馬稲子」も7月7日から20日まで東京・シネマヴェーラ渋谷で開催される。
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