ハリウッドからのセクハラ騒動 フランスでは未来に向けた具体策を求める動き
2018年3月25日 09:37
[映画.com ニュース]ハリウッドのプロデューサー、ハーベイ・ワインスタインのセクハラ騒動に端を発した映画業界のスキャンダルは、止どまるどころか益々波紋を広げているが、その波はフランスにも届いている。♯metooをはじめ、セクハラの被害者が加害者を告発する♯balancetonporc(豚を告発しろ)といったムーブメントが一挙に拡散した。
そんな折、カトリーヌ・ドヌーブを始めとする著名な女性100人が、こうした風潮に歯止めをかけるような公開レターを全国紙ル・モンドに掲載したため、さらに炎上を招くことになった。公開レターのなかでドヌーブらは、「権力乱用を非難する以上に男性や性的なものを憎悪するようになっている」として、「強姦は犯罪だが、女性を口説こうとするのは犯罪ではない。(中略)性的な自由にはつきものの、口説く自由を認めるべき」と、清教徒的な潔癖主義の行き過ぎを非難した。だがこの書簡は論争を巻き起こし、首相付き男女平等副大統領のマルレーヌ・シアパ女史までが、性暴力の問題を矮小化する危険があると指摘。こうした非難を受けてドヌーブは、今度はリベラシオン紙に新たな書簡を寄せ、自分は自由な女性であり、ハラスメントを擁護するつもりはなかったとしながらも、先の公開レターによって傷ついた当事者には謝罪したい旨を明らかにした。
一方、70年代の自由な女性のシンボルと目されたブリジット・バルドーは雑誌の取材で、「女優の多くは偽善者。役を得るためにプロデューサーを誘惑し、後になってハラスメントを受けたと語る」と、彼女らしい歯に衣着せぬ物言いをしている。
たしかにこの問題は、すべてのケースを一般化して論じることはできないし、アメリカとフランスでは文化や習慣も異なるゆえに、同じ土俵で論じることは困難かもしれない。セクシュアルおよびパワーハラスメントを許すということではなく、何を持ってハラスメントと受け取るかということに対する意識の違いがあるのではないだろうか。ドヌーブが、「仕事のディナーで膝を触ったりしただけ」で糾弾される必要はない、と考えるように。
他にも、この問題に言及する女優たちは跡を絶たない。イザベル・ユペールは、ドヌーブの公開レターは読んでいないと断りつつ、「どんな場合でも、女性が自由に表現できる場は大切だし、ハラスメントに対しては恐れずに言及していくべき」と発言。カリン・ビアールは、「被害に遭った女性たちが一般の耳目に晒されるという恐れを抱くことなく、安心して訴えることができる司法システムの確立が必要」と唱えている。「パターソン」などで知られるイラン系の女優ゴルシフテ・ファラハニは、「男性はまず女性を恐れることをやめるべき。抑圧する替わりに女性たちに権力を与え、尊敬を寄せるべき」と語っている。
ともあれ、こうした風潮を受けてフランスでは、make.orgのような、セクシュアル・ヴァイオレンスに反対し、被害者の受け皿となる団体が増えている。さらに法的な対策の設置をマクロン大統領に請願するために、署名を募る窓口♯1femmesur2もある。
魔女狩りならぬ“カサノバ狩り”になるだけではなく、未来に向けた具体的な対策を求める動きが出るあたりは、フランスらしいと言えるかもしれない。(佐藤久理子)
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。