記憶や祈りがテーマの美しいコマ撮りアニメ 村田朋泰の珠玉の作品集が劇場公開
2018年3月16日 15:30
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[映画.com ニュース]映像作家・村田朋泰氏の傑作選「村田朋泰特集・夢の記憶装置」が、3月17日から公開される。記憶や祈りテーマに、アナログにこだわった制作手法とオリジナリティあふれる造形で、繊細で美しいコマ撮りアニメーションの世界が繰り広げられる短編集だ。公開を前に、村田氏に話を聞いた。
特集上映では、「この世とあの世の間の話、神様の話などをベースに構成した」という7本が上映される。初公開となる最新作「松が枝を結び」は、東日本大震災後に着手したシリーズの第3作で、津波で引き裂かれた双子の現在と過去を描き出す。
「震災を経験して、どうして僕が作品を作るんだろうという意義がひっくり返りました。それまではもっと個人的な欲求に目を向けていたのですが、震災後は、アニメーションを作る僕の役割は何かと考えるようになりました。記憶をとどめていく装置のようなものとして、アニメーションが広く役立つのではないかと。震災や原発という日本が抱えるものをアニメーションという形に変換して、伝えていくことが大事だと考えました」
今作「松が枝を結び」を皮切りに、同シリーズは全5部作になる予定だ。「震災後、多くの方たちが僕と同じように価値観が変わったり、自分が住んでいる土地のことを考えて、その風土や信仰が失われてしまうること、自分たちが何を残して、語り継いでいかなきゃいけないかということ(を)意識していると思うんです。僕もその思いが強く、最初の原初的な日本人の信仰とか考え方に回帰していった。次回作は縄文時代を舞台に、供養をする物語。同じシリーズで、それぞれテイストや制作の仕方をあえて変えています。僕自身、そういった違いのある5部作が出来上がるのを楽しみにしています」
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立体の人形アニメーションの魅力は「素材が変わることで見え方が変わることが、面白い表現のひとつ。そういった可能性も提示したい」という。「コマ撮りは、CGと対極にあり、映像からぬくもり、親近感、懐かしさのようなものが感じられます。それはコンピュータで完全に計算された世界ではなく、人形にしても、セットにしても、素材を手で作って、手で動かすという、人が介入して作られたもののなかで世界が出来ているからではないでしょうか。言葉に変換するのは難しいのですが、手で作られたものは、物語の面白さとは別で、映像から受けるぬくもりがちゃんと生きている。動かす回数も、1秒24コマが一般的ですが、僕は2コマ落ちの15コマで撮っています。人が動かしている名残りが、ある程度映像で残ることが大事なのではないかなと思っています」
日本の文楽をはじめ、芸術性が高く、メッセージ性を含んだチェコのアニメーション作家、ヤン・シュバンクマイエル、イジー・バルタらから強い影響を受けたそう。また、実写映画では「小津安二郎さんが大好き。あとは、アンドレイ・タルコフスキーやビクトル・エリセの作品など。会話が少なく、映像美やそこに喚起されるようなものがある映画が好きです」と明かす。村田氏の作品からも、鑑賞者がまるでどこかで自身が経験したかのようなある種のノスタルジーを感じる。「僕の作品は言葉がありません。僕自身、人から考えを押し付けられるのが嫌なんです。見ている人が持つそれぞれの記憶に少しコミットして、自分の作品を見ていただけるのはうれしいですね」と語った。
今回の特集上映では、劇場版「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」の主題歌Galileo Galilei「サークルゲーム」のMV に使われた「木ノ花ノ咲クヤ森」、実在した理容室から着想を得て、古き良き昭和の一家に起こる不思議な出来事を描いた「家族デッキ」、娘を亡くしたピアニストが体験する夢の旅を描いた「朱の路」などを併映。コマ撮りアニメーションの繊細な手仕事、村田氏が提示する独自の世界観をぜひ大スクリーンで堪能してほしい。
「村田朋泰特集・夢の記憶装置」は、3月17日からシアター・イメージフォーラムほかで開催。
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