町山智浩が解説、女性の成長を描く「RAW」はなぜホラーになった?
2018年2月2日 21:00
[映画.com ニュース] 第69回カンヌ国際映画祭で批評家連盟賞に輝いた「RAW 少女のめざめ」が2月2日、公開初日を迎え、映画評論家の町山智浩によるトークイベントが東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた。
第41回トロント国際映画祭、第49回シッチェス・カタロニア国際映画祭ほか多数の映画祭で賞に輝き、2017年6月に行われたフランス映画祭2017ではチケットが完売になるなど映画ファンの関心を集めた本作。厳格なベジタリアンの獣医一家に育ち、家族と同じ獣医学校に入学した16歳のジュスティーヌ(ガランス・マリリエール)。寮生活を送り始めたジュスティーヌは、新入生の通過儀礼として生肉を食べることを強要されてしまう。学校になじむために家族のおきてを破り生肉を食べたジュスティーヌだったが、その日を境に隠されていた本性があらわになり、変貌を遂げていく。
“これまでにないニュータイプのホラー”と言われ、トロント映画祭では失神者も出したという触れ込みの本作。だが、町山氏は「監督は元々、ホラーにするつもりはなかった」と語り、俊英ジュリア・デュクルノー監督が本作の主演女優マリリエールと初タッグを組んだ「ジュニア」という短編映画を紹介。「実は物語の内容はほぼ同じなんですが、こちらは女の子が初潮を迎えるという話です。(初潮を迎え、本作で肉を食べたときと同様に)皮膚がむけてきたりして、しばらく休んで学校に行くと、先生も生徒たちも『誰?』と思うくらい、女の子らしくなってて、いつもじゃれ合って遊んでいた男の子も(少女の変化に照れて)口を利かなくなって……という甘酸っぱい映画なんです。それを元に、(初潮ではなく)セックスで描いた作品。結果的にホラーになった」と説明する。
さらに、町山氏は「女性は子どもを生む能力が備わったとき、自分ではコントロールできないような違和感がある。自分が得体のしれないものに変形していく感覚があり、それを表現したくてホラーになった」という監督の言葉を紹介した。
本作は獣医学校を舞台にしており、(人間を含めた)動物の生と死がリアルに描かれているが「生き物を扱うということは、血や内臓にまみれるということ。少女がそれを知っていく。あなたも血や肉でできていて、性欲があって、肉を食べて生きていくのよと知っていく成長の物語」と考察。衝撃の結末については、「予想してない感動を最後に与えて終わるすごい映画」と感嘆。「セックスを超えた大きな愛が描かれている」と語っていた。