海外映画祭で輝く池田暁監督、作風に小津安二郎&水木しげるの影響
2017年10月27日 22:00
[映画.com ニュース] 2007年に若手映画作家の登竜門であるPFF(ぴあフィルムフェスティバル)で脚光を浴びた、池田暁監督の最新作「うろんなところ」が10月27日、開催中の第30回東京国際映画祭の日本映画スプラッシュ部門で上映。池田監督は、碓井千鶴プロデューサーとともにTOHOシネマズ六本木ヒルズでのティーチインに出席した。
頭に刺さった虫を取るために散髪屋を探しに行く小乃子、妻から「薬を届けに行く」「子どもができたのでお祝いに手袋を作りに行く」という奇妙な頼まれごとをされた土井、自宅を占拠する青い妖怪を退治するため雑貨屋に向かう和子。3人の男女を主役に、人々の夢が溶けてにじんだような、摩訶不思議なシュールファンタジーを紡いだ。
13年に長編「山守クリップ工場の辺り」が、ロッテルダム国際映画祭とバンクーバー国際映画祭のグランプリに輝いた池田監督。ありふれた風景に幻想的な夢を融合させたが、物語成立の過程を「いろんな夢をくっつけています。それも僕の夢だけでなく、俳優さんや碓井さんに『今日、何の夢を見た?』と聞いて、くっつけていきました」と明かし、「最初、碓井さんから『15分の短編をつくって』と言われて、完成したら90分になった」と苦笑交じりに告白した。
また、今作は全編を固定カメラで撮影。カメラワークに対して小津安二郎監督の影響を指摘されると、池田監督は「前作『山守クリップ工場の辺り』も、ほぼ動かさない映画でした。小津さんの映画は大好きで、よくそう言われますが、実は意識はあまりしていない」と語る。それでも、「小津さんの映画は、世界中のいろんな監督に影響を与えている」としたうえで、「そういうのが、僕に“下ってきている”のかな、とは感じています」と自認していた。
さらに奇天烈な物語については「ねじ式」などの漫画家・つげ義春氏、昭和的なモチーフの数々については「ゲゲゲの鬼太郎」などの水木しげる氏の影響が大きいと語る。「古い建物や風景、日本的なものが好きなんです。また(夢が題材のため)時代を固定したくなかったので、昭和的な背景で撮っていきました」と話し、「子どものころ、水木さんの漫画を読んでいて、大人になって読み返す漫画も、水木さんのものしかない。なぜ何回読んでも面白いのかというと、ストーリーではないんです。それは風景や雰囲気を読んで感じたいと思うから。風景や背景は、僕も映画のなかで大切にしたいと思っています」と真摯に説明していた。
なお舞台挨拶には、撮影の長田水紀、出演の太田みち、芝博文、墨井鯨子、よこえとも子、西山啓介、木村知貴、高橋敏之、美輪玲華も登壇した。第30回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。
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